考察『光る君へ』24話 まひろ(吉高由里子)に忘れえぬ人がいても「まるごと引き受ける」宣孝(佐々木蔵之介)の大人の余裕と包容力!
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。24話「忘れえぬ人」では、まひろ(のちの紫式部/吉高由里子)に求婚した宣孝(佐々木蔵之介)との関係の進展、出家した中宮・定子(高畑充希)を追い求める一条帝(塩野瑛久)の決意など、 それぞれの愛の行動が印象的でした。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載24回です。
それもお前の一部だ
宣孝(佐々木蔵之介)の言うとおり戯れではないのだろう。まひろ(吉高由里子)への思いは、これまでの長い時間で少しずつ育っていったものだ。かつては婿を世話しようとするなど、宣孝本人も己の思いに気づいていなかった。第13話で彼の息子に婿として通ってもらえまいかという提案を為時(岸谷五朗)から受けたとき、あれは駄目! ダメダメダメダーメ……とムキになって否定した。あのように返事してしまい、自分でも驚いたことだろう。 そして、まひろがいつまでも婿を取らず年齢を重ねた今、ふたりで過ごす機会を経て、求婚の覚悟を決めたように見える。周明(松下洸平)とふたりきりの現場を目にして、突然現れた得体の知れない若造に奪われるくらいならという思いが背中を押したのだ、きっと。 宣孝「ありのままのお前をまるごと引き受ける。それができるのはわしだけだ」 まひろ「忘れえぬ人がいてもよろしいのですか」 宣孝「よい。それもお前の一部だ。まるごと引き受けるとはそういうことだ」 くっそ、大人の余裕と包容力……! 紫式部の史実だけなぞると「父親ほど年上の男性の妾となった」のは強烈で、ともすれば悲劇的な印象を受ける。が、ドラマでは宣孝を第1話のまひろの少女時代から登場させることによって、一人の女性として彼女を愛するようになった経緯を見せた。 いくら佐々木蔵之介でも幼い頃から見知った親戚の娘を妾にするのは、ちょっと気持ち悪いぞ!という感情さえ「まるごと引き受ける」という器の大きい台詞と、1話から24話まで積み重ねた演技の前に、吹き飛んでしまった。