考察『光る君へ』24話 まひろ(吉高由里子)に忘れえぬ人がいても「まるごと引き受ける」宣孝(佐々木蔵之介)の大人の余裕と包容力!
うまく誘惑できない周明
「わかってくれるのはまひろだけだ」 「望みを果たし、帰るときが来たら一緒に宋に行こう」 大人の貫禄を見せつけた宣孝のすぐ後に周明のへたくそな誘惑は、どうにも分が悪い。まひろもキュンとするどころか、どちらの台詞に対しても「ん?」という反応ではないか。 宋語を復習する合間にも思い浮かぶのは周明との宋行きではなく、宣孝に指摘された「忘れえぬ人」……道長(柄本佑)だ。 しかし、うまく誘惑できないということは、周明が根は善人である証明かもしれない。
大赦の勅命
女院・詮子(吉田羊)が倒れた。自分の寝所で伊周(三浦翔平)の幻を見て、恐ろしい顔で睨んでいると怯えている。本当に伊周の生霊が現れたとは思えない。たまたまなんらかの体調不良を起こしたところに、中関白家兄弟を仮病で陥れたという後ろめたさが強烈に働いたのではないか。 呪術や霊の力が信じられていた時代は、相手から恨みを買っている自覚が心身に影響を及ぼしたのかもしれない。 祭文を読み上げる安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)の格好良いこと!そして声の良いこと。御簾の向こうから、この声が聞こえてくるだけでも快復すると思う。気の持ちようの病ならば尚更。 帝の母の病平癒を祈念して、大赦の勅命が下されることとなった。 大赦は律令制においては、恩赦よりも許される刑罰の範囲が広い。それもあって陣定でも「伊周、隆家(竜星涼)の罪は許すべきである」この点については意見が一致した。 ところで陣定はドラマレビュー第17回で書いたように私は毎度注目している大好きな場面なのだが、皆さんはいかがですか? 世代交代や権力の趨勢がひとめでわかる。パンデミックと政変を経て公任(町田啓太)と斉信(金田哲)は少しずつ位が上がってきていて、一方で最高権力者である左大臣・道長の一番近くに座る右大臣・顕光(あきみつ/宮川一朗太)と内大臣・公季(きんすえ/米村拓彰)は、一条帝に入内した女御・元子と義子、それぞれの父親だ。 今後も長くこの場に座ることになる実資(秋山竜次)の実直ぶりと、道綱(上地雄輔)の政治的人畜無害ぶりも毎回ここで伝わる。 道綱の連発する「だよね」「同じです」で学級会や会議をやりすごす人間、見たことあるぞ。