考察『光る君へ』24話 まひろ(吉高由里子)に忘れえぬ人がいても「まるごと引き受ける」宣孝(佐々木蔵之介)の大人の余裕と包容力!
道長を責める一条帝
中関白家兄弟が失脚した長徳の変から約2年。状況が掴めてきた上に冷静になった一条帝(塩野瑛久)は道長を責める。 「あの時そなたに止めてほしかった」 それは俺のせいですか!?と言いたくなるような、この手の無茶な叱責は『鎌倉殿の13人』(2022年大河ドラマ)でも観た覚えがある。後白河法皇(西田敏行)が「なぜわしを止めなかったのか! 役立たず!」と側近を責めていた。ただまあ、同じ台詞でも後白河院は約60歳、一条帝は18歳。お若い。 そして、最愛の中宮・定子(高畑充希)とあの事件をきっかけに別れてしまったとなると、誰かを責めたくもなるだろう。 それにしても、長徳の変は道長が首謀者とする説が有力なのだが、この作品の道長は善い人として描かれている。この先どうなるのだろうと思って観ていたら、定子への愛ゆえに一条帝が「あれらは道長のせい」という認識となり、主従関係に亀裂が生じ始めているのが興味深い。 本人にそのつもりはないのに周りから悪者にされるパターンなのか、道長。
元気そうな隆家
出雲にいるはずの隆家が戻ってくるのが速すぎる。不可解なり!という実資。実際には大赦の勅許がおりるまで、病気を理由に但馬国(現在の兵庫県北部)にいたという説がある。 果たして、道長と対面した隆家はツヤッツヤの顔色で、とても元気そうだ。出雲だろうが但馬国だろうが、都から離れた場所でのびのびと楽しんでいたのではないだろうか。 「出雲の土産に、干しシジミをどっさり持って参りました!」 現代でも島根県宍道湖産シジミは有名だが、その干しシジミは但馬国産ではなく……? あくまでも自分は出雲にいましたよというアピール、この豪胆さ。宮廷以外の場所で活かされそうだ。
あなたは嘘をついている
「早くまひろと宋に行きたい」 「左大臣に手紙を書いてくれ、ふたりで宋に行くためだ」 からの、周明の抱擁! 拙速にもほどがある! 「あなたは嘘をついている。私を好いてなぞいない」 「抱きしめられるとわかる」 心から自分を愛する男に求められ、抱きしめられたことがあるのだものな……更に手紙を書かねば喉を切ると脅されても、まひろは動じない。周明が思っているような世間知らずのお姫様ではないのだ、修羅場を見てきた女なのだ。 「民に等しく機会を与える国など、この世のどこにもないのだ」 まひろの宋への憧れを打ち砕く言葉だが、その現実を告げること自体が苦しそうに見える。