ラダックへのバイク旅で見つける本当の自分。コミックエッセイ『女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。』をレビュー
仕事、生活、人間関係…。日々目まぐるしく生活する中、気がついたらモヤモヤが溜まっていたり、自分自身を見失って息苦しくなったり。そんな悩みを抱える人も多いのではないだろうか。
『女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。』(里中はるか/KADOKAWA)は、東京で暮らすメンタル不調気味の会社員が、インドのヒマラヤ山脈にあるライダーの聖地・ラダックでのバイク旅を通して自分自身を取り戻していく話だ。漫画だけでなく、ラダックの文化や生活についての豊富な説明や、旅の持ち物や服装が丁寧に記されており、旅の情報も大充実だ。 コロナ禍の2022年、閉塞感漂う日常の中で作者は仕事や周りの変化などに悩んでいた。「有用でなければ生きていけない」そんな想いに囚われ、自分の無価値さを感じる日々。本当の自分を取り戻すために、かねてからの趣味であるバイクでの旅に出ることを決意する。行き先はライダーの聖地・ラダックーー。 旅に出た当初、縮こまっていた気持ちは旅の中でゆっくりと和らいでいく。非日常の中、現地のご飯を食べたりシャワーの温かさに喜んだりとシンプルな出来事を通して、今この瞬間の大切さやありのままの自分に気がついていく。その姿は、何かに疲れて旅に出たことがある人ならば強く頷けるものだ。 もちろん旅は楽しいことだけでなく、体調不良やトラブルもつきものだ。ラダックは標高3,500mを超える土地なので、高山病になるライダーが多く、作者も例に漏れず苦しむことになる。さらに、慣れない環境の生活で下痢にも3週間苦しみ続ける。他にも現地の慣れない交通ルール、土砂降りや険しい峠など一つひとつを乗り越えていく様子も、見どころだ。 旅をすることは、日常の自分自身と離れ、今一度自分を見つめ直す絶好の機会だ。本書のページを開いて、作者と一緒にラダックを旅してみてはどうだろうか。あなたも旅に出たくなるかもしれないし、何かを始めたくなるかもしれない。いま日々の生活に疲れモヤモヤした気持ちを抱えているなら、ぜひ手に取ってみてほしい一冊だ。 文=ネゴト / fumi