ここにきて分かった、日本人が「車を買わなくなった」本当の理由…高すぎる税金制度を劇的に変える「3つのポイント」
いま、自動車界は「百年に一度の変革期」を迎えている。2024年末~2025年は、日本の自動車関連税制が「大勝負の年」に臨む年だからだ。 【写真】トヨタは生き残り、ホンダは苦しくなる…明暗が分かれた「日本の自動車産業」 自動車ユーザーにとって支払う税金が「高くなる」か「安くなるか」という視点は、円安や物価高が続くなかでもちろん大切な問題だが、それだけでなく、今回の税制改革は日本の基幹産業である自動車産業全体の行方も決めかねない重要な岐路でもある。 そんな状況を踏まえつつ、前編記事の<このままでは日本が破綻する可能性も…ここにきて「自動車税」が危ない状況に陥っている「本当の理由」>に引き続き「待ったなしの抜本改革」を考えてみたい。
税制「抜本改革」の3つのポイント
こうした状況を踏まえて、日本政府は「自動車関連税制を抜本的に改革する」と宣言した。具体的には「令和6年度(2024年度)与党税制改正大綱」において、以下のように記している。 <電気自動車等の普及や市場の活性化等の観点から、原因者負担・受益者負担の原則を踏まえ、また、その負担分でモビリティ分野を支え、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげるため、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて、次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進める> 「次のエコカー減税期限」とは2026年3月末。つまりこの1年半で、日本の自動車税制は大きく変わることになる(より厳密には「どう変えるか」を決める)。 ではハイブリッド車やBEVが増えてゆく次世代モビリティ社会を見据えて、どのような自動車税制がよいだろうと議論されているのか。 2024年10月に日本自動車工業会が与党税調に提案した「令和7年度税制改正・予算要望の概要及び自動車税制抜本見直しの改革案」を見てみよう。 改革提案の骨子は主に以下3点。 (1)取得時の税制を「消費税」に一本化 かつて「自動車取得税」という税金があったが、消費税10%への引き上げに合わせて廃止されている。…が、この自動車取得税は「環境性能割」という名前でこっそり生きており、税率は車両本体価格の0~3%(環境性能に応じ)かかっている。 かつてクルマが贅沢品であった時代の名残だが、特に地方では生活必需品になっている自動車の購入ハードルを下げることは、生活困窮者を下支えし、需要を喚起し、国内市場の活性化も狙える。 (2)保有にかかる「自動車税」と「自動車重量税」を統合して「重量ベース」で一本化 上述のとおり、現在の自動車税は「排気量」を基準に定められており、市販車の実態に合っていない。いっぽうで「重いクルマは道路にかける負担が大きい」という原則はBEVを含む全てのクルマに普遍的だ。 現在の自動車重量税と自動車税を統合して、重ければ重いほど段階的に課税を重くするよう改良すれば、おおむね実態に即することになる。 さらに、「環境性能」に応じ課税を増減させる仕組みを導入し、環境性能の良いクルマの開発・購入インセンティブにつながることで、保有車ベースでのCO2削減に貢献できる。 (3)モビリティの受益に応じた新たな課税・負担の枠組み作り この3つめは将来的な話なのだが、税の基本は「受益者負担」であり、クルマという製品の受益者は、そのクルマの保有者だけではない。モノや人を運べば、届いた人や運ばれた人が受益者になる。 コンビニの配送トラックが走り回っているからこそ美味しい弁当がいつでも購入でき、Amazonで購入した商品が翌日に届く。ラストワンマイルはクルマが担っている現状は、21世紀いっぱい続く見込みだ。 だとしたら、見直すべきは「クルマの所有者だけに保有の税がかかる」ことではないか。 カーシェアリングや自動運転の時代に対応できるよう、モビリティの(あえて「クルマの」とは言わない)保有にかかる税金は、「使う人」がまんべんなく負担してゆく制度にすべきではないか。