絶望を乗り越えろ! 理不尽な世界を生き抜く勇気が持てる映画5選!
”湿地の少女”の成長を描く極上ミステリー!『ザリガニの鳴くところ』
時は1969年、ノースカロライナ州に広がる湿地で若い男の死体が発見され、カイアという女性に殺人容疑がかかる。彼女は幼少期、家族が次々とこの地を去る中、たった一人で自宅に残され、ずっと孤独に生きてきた人だった。周囲からは常に蔑んだ目で見られ、読み書きもできないまま、ひっそりと息を潜めて暮らす日々……。そう書くと何の希望もない物語のように思えるかもしれないが、しかしこの映画は実に多面的だ。ロマンスもあり、成長物語もあり、ミステリーとしての側面も機能させながら、唯一無二の魅力を羽ばたかせていく。 あらゆる生物が生存本能に身を任せ、あるがままに生を育む湿地。その生態や環境から全てを学んで生きてきたからこそ、カイアはいざという場面で思いがけない決断力を発揮する。それが源となって、過去の痛みを乗り越えた未来の平穏が切り開かれていくかのよう。原作は、長らく自然環境を見つめ続けた生物学者が69歳にして初めて綴った小説。ラストの瞬間までぜひ目を離さないでほしい。
文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu