絶望を乗り越えろ! 理不尽な世界を生き抜く勇気が持てる映画5選!
スケートボードで結ばれた不滅の友情!『行き止まりの世界に生まれて』
舞台はイリノイ州ロックフォード。失業率の増加や人口減少が著しいこの都市で育ち、家庭内の問題に苦しみながらもスケートボードを唯一の拠り所として生きてきた3人の青年にカメラを向けた、10年以上に及ぶ歳月のドキュメンタリーである。なぜこれほどの長期にわたって定点観察できたのか。理由は簡単。3人の青年の一人が本作の監督であり、彼は映像作家を志す前から、ライフワークとして親友たちの素顔をずっと記録し続けていたからだ。 こうして撮り溜めた映像に加え、大人になった彼らの切実な現状や過去への述懐を紡ぎ合わせ、非常にレアで意義深い『都市と若者のクロニクル』になりえているところが驚嘆に値する。親友の回すカメラだからこそ、語られる言葉には親密さと真実味が溢れ、そして何より彼らがひとたびスケボーに乗ると、まるで羽根でも生えたかのように表情の憂いが消え、軽やかに解き放たれていく。その姿をスケボーで追いかけるカメラワークがこれまた秀逸。デビュー作ながらアカデミー賞では長編ドキュメンタリー賞候補入りを果たした。
人の尊厳を訴える巨匠の持ち味が炸裂!『わたしは、ダニエル・ブレイク』
個を踏みにじる社会状況に異を唱え続ける巨匠ケン・ローチが、イギリス北東部に暮らす一人の男に焦点を当て、その生き様を力強く描いたヒューマンドラマ。主人公ダニエルは心臓の病のため建設作業員としての仕事が続けられずにいる。そのため国からの給付を得ようとするも、得られた回答は「条件を満たしていません」の一点張り。問い合わせ電話は気が遠くなるほど待たされ、オペレーターの対応は何ら要領を得ない。役所へ足を運んでも理不尽な対応ばかりで話が前に進まない。そんな中、同様に役所で途方に暮れる母子との交流が生まれ……。 ローチ演出では、いつも俳優に状況説明と指示のみを与え、あくまで各々の自主性に任せてカメラの前で演じさせるのだとか。かくもドキュメンタリー的なリアリズムを貫きつつ、社会に屈しない人間の矜恃がじわりと染み出し、いつしか観る者の魂を大いに振るわせる。この不条理かつ冷たい世の中で人はいかに振る舞えるのか。切実な問題提起からこれほどまでに温かく気骨あるドラマを生み出せるのはローチ監督だけ。カンヌ映画祭最高賞に輝く傑作である。