絶望を乗り越えろ! 理不尽な世界を生き抜く勇気が持てる映画5選!
紛争により住民同士が敵となる!『ベルファスト』
少年期を北アイルランドのベルファストで送った映画人ケネス・ブラナーが万感を込めて描く半自伝的な一本。’69年当時、かの地は北アイルランド紛争によって、プロテスタントとカトリックの住民同士の衝突が絶えなかった。カトリックの多い地域で暮らすプロテスタント一家の少年バディにとってみれば、どちらも善き隣人であることに変わりはない。しかし強硬派による暴力はとどまるところを知らず、そんな日々から逃れようと一家はイングランドへの移住を考えはじめる……。 バリケードを張りめぐらし、夜通し火を絶やさず交代で見張りを続ける住民たち。いつ何時、怒れる群衆が雪崩れ込んでくるかわからない緊張と恐怖が充満する一方、少年の暮らしは子供ながらの瑞々しい感性の発露と、目と心を楽しませるカルチャー体験でいっぱいだ。その一つ一つがブラナーの礎なのだと考えると無性に胸が熱くなる。さらに忘れがたいのは慈愛に満ちた祖父母の存在だ。「さあ行きなさい。振り返らないで。愛してる」。ジュディ・デンチが放つ力強く崇高なセリフが、モノクロームの世界を宝石のごとく輝かせている。
絶対にギブアップしない執念に心が動かされる!『ロックアップ』
刑期終了まであとわずかの模範囚が、因縁の相手によって全米最悪のゲートウェイ刑務所へと移送される。主人公レオンを取り囲む囚人たちは誰もが凶悪かつ屈強な奴らばかり。その上、看守までもがグルになって、レオンへのいたぶり、嫌がらせは次第に度合いを増す一方だ。しかしどれだけ叩きのめしてもギブアップせず、必ず這い上がるレオンの姿に感化され、囚人や看守の一部も少しずつ彼への見方を変えていき……。 『ロッキー』『ランボー』『コブラ』などの名作により、70年代、80年代のアイコンともいうべき凄みを帯びたスタローンだが、本作ではリングに上がるわけでも、銃を手に取るわけでもなく、刑務所の不条理にただひたすらグッと耐え続ける表情が印象的。それらがついに大爆発するラスト15分はビル・コンティの胸が沸き立つような音楽も相まって、思わず見る側のこぶしに力が入ってしまうこと請け合いだ。先月末、88歳で逝去した名優ドナルド・サザーランドの憎々しい怪演(宿敵の刑務所長役)も忘れがたい一作である。