「親の反応が二次加害になりうることを知って」――記者が語る、子どもの性被害に大人は何ができるか #性のギモン
被害を防ぐ第一歩はなんでも話せる親子関係
――文部科学省も、性犯罪対策として幼児期からプライベートゾーンを教えることを「生命(いのち)の安全教育」として推進していますね。 「この20年、学校での性教育がバッシングを受けて停滞していたことを思えば、文科省が教材をつくり、学校現場に周知されるようになったのは大きな進歩だと思います。やらないよりはやったほうが断然いいです。ですが、『生命の安全教育』は『いやだと思ったらいやと言おう』というところばかりに力点が置かれているように感じます」 ――どういうことでしょうか。 「幼いときから家庭で性暴力を受けてきた場合など、『いや』と思えない子どももいるかもしれません。『いや』と言えない自分が悪かったと思う子どももいるかもしれません。もっと総合的に性というものをとらえて、教えていく必要があると思います」 「子どもたち一人ひとりに『自分は認められている』という感覚がなければ、『生命の安全教育』は機能しないのではないかと思います。例えば、幼稚園のときに近所に住む男性から被害にあった女性は、自分の身に起こったことは何かおかしいと思ったけれど、父が怖くて相談できなかった、なんでも話せる関係だったら打ち明けていたかもしれないと話していました。それは、わりと多くの被害者の方が共通しておっしゃっていることです。この習い事をしなさいとか塾に通いなさいとか、親の思いを一方的に押しつけられている場合、子どもは『親は自分の言うことを聞いてくれない』と感じているので、被害にあっても相談できないという例が少なからずあるように思います」
――親の意識を変えていく必要があると。 「子どもの性被害を予防する、被害にあってもその影響を最小限にするためには、子どもが親やまわりの大人にいろんなことを打ち明けられる環境であることが必要です。でもあまりそうなっていないのが現実のようです」 ――どうしてなのでしょう。 「子どもが意見を言うことは、子どもが持っている当たり前の権利なんだという認識が、社会共通のものになっていないからではないかと思います。子どもの権利条約も日本ではあまり知られていないですよね」