「親の反応が二次加害になりうることを知って」――記者が語る、子どもの性被害に大人は何ができるか #性のギモン
2歳3歳からでもプライベートゾーンを教える
――連載では、教員や指導者といった立場を利用した加害、見知らぬ人からの突然の性暴力など、さまざまな角度から取り上げています。 「8歳のとき、塾の帰りに見知らぬ男性に被害を受けた女性は、ナイフを持っているように装われて脅され、殺されるかもしれないという恐怖におびえました。男は逮捕されましたが、家に帰って母親とお風呂に入ったときに『お母さんが洗ったらきれいになるからね』と言われるんです。母親はもちろんよかれと思って口にしています。でも彼女はそう言われて、『やっぱり私は汚れたんだ』と思って深く傷ついたそうです。父親が犯人を憎んで荒れたのも『自分のせいでこうなった』と感じ、身の置きどころをなくしていきます」 「彼女は人生を一緒に歩いてくれる人と出会い、子どもにも恵まれて現在は安定した暮らしをしています。昔は365日『死にたい、死にたい』と思っていたけれど、今は330日は笑っていられるようになったそうです。まわりの助けを借りながら自分でも努力して、少しずつ平穏な時間が増えていきました。でも裏を返すと、今でも心が乱れたり涙が止まらなかったりする日があるということです。被害から40年以上経っても忘れることはできない。それならばと、彼女は被害の経験も自分の人生をかたちづくったものの一つだととらえようとしています。取材に応じたのは、同じように被害にあった人たちに、330日は笑っていられるようになったと伝えたいからだともおっしゃっていました」
――子どもの性被害をなくすのに有効な手立てはあるのでしょうか。 「性教育は重要だと思います。2歳3歳からでもプライベートゾーンのルールを教えていけばいいと思います。『自分の体は自分のもので、大切なものである』ということから始めて、『水着で隠れる部分(=プライベートゾーン)と口は自分だけの大切なところだから人に見せたり触らせたりしない』『触ってくるような人がいたら信頼できる大人に言う』と繰り返し伝える。実践している人に聞くと、何度も教えると幼い子どもたちにも浸透していくそうです」 ――親やきょうだいから被害を受けている場合もありますよね。 「家庭だけに性教育をまかせておいてはダメだと思います。今、おうち性教育がはやっています。いいことだと思いますが、家の中に加害者がいる場合、加害者が子どもに教えるわけがありません。家庭でも教えるし、学校や幼稚園、保育園でも教えるというふうに、社会全体で取り組む必要があります」