なぜ全米女子プロで渋野日向子は首位3打差の暫定13位の好発進に成功したのか?
ティショットをガードバンカーに打ち込んだ8番パー3(204ヤード)も2オン2パットのボギーとなったが、直後の9番パー5(522ヤード)のセカンドショットをピンまで80ヤードの位置に落とす。 オフから最も練習を積み重ね、絶対の自信を抱く距離とした3打目を、強烈なバックスピンをかけて50センチにつける。2度目のバウンスバックとともに、前半を1アンダーで折り返した。 「例えロングパットになってもいいから、前半から狭いところを外さないようにショットを徹底していました。ひとつだけパー3(の6番)で左に外しちゃいましたけど、あとは本当に狙った通りに、そこなら大丈夫というところにほぼつけられていたので、そこはすごくよかったと思っています」 27位タイだった前週のショップライトLPGAクラシックで、渋野は3パットを連発している。 日本でほとんど経験できない、芽が強くボールがボコボコはねるポアナ芝に対して「もう顔を見るのも嫌ですね」と苦笑していたが、今大会のコースでは日本でもお馴染みのベント芝が使用されている。 ただ、グリーンは前後左右に広く、アンジュレーションもきつい。ピンも左右どちらかに寄って切られているなかで、渋野はあえて狭いサイドを狙い続けた。果敢に攻め続けた結果として、長いパットが残るのならば仕方がない。虎穴に入らずんば虎児を得ず、の心境で後半のインに臨んだ。 しかし、迎えた12番パー4(435ヤード)で、渋野本人をして「本当に泣きそうになったし、何だか懐かしいな、とも思ってしまって」という落とし穴が待っていた。ピン左に2オンした直後に、20メートルの距離から、まさかの4パットを演じてダブルボギーとしてしまったからだ。
ポアナ芝に苦手意識を抱いた前週は距離感、方向性を含めた、すべてが狂わされた。しかし、今大会は怯むことなく、1メートルぐらいならオーバーしてもいいとばかりにファーストパットを打ち続けた。 AIG全英女子オープンを制して世界中に衝撃を与え、日本国内でも4勝をあげた昨年の快進撃を導いた強気のプレーを、12番ホールのバーディパットでも実践した。 しかし、カップの右を外れたボールは2メートルもオーバー。パーパットもカップの右に蹴られ、さらに1メートルの距離を残してしまう。ひと呼吸置いて気持ちを落ち着かせるべき場面で、打ち急いでしまったボギーパットも再びカップの右をかすめてしまった。 渋野を「何だか懐かしい」と苦笑させたのは、優勝した昨年8月の全英女子オープン最終日、そして2位タイだった同11月のLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップの初日で叩いた4パットを思い出したからだろう。 続く13番パー4(354ヤード)もティショットがディボットに入る不運もあり、2打目をグリーン左奥に外してしまう。「寄せなきゃ」という思いが強すぎたアプローチを15メートルもオーバーしてしまうボギーで、スコアも2オーバーまで後退させてしまった。 しかし、渋野は切れなかった。 2オンに成功させた15番パー4(440ヤード)で、2.5メートルの下りフックラインを沈めてバーディを奪うと、最終18番パー4(412ヤード)でも2打目をピンまで約2メートルにつけるバーディで、スコアをイーブンに戻して初日を終えたのである。 「ボギーよりも悪いスコアの直後」という本来のバウンスバックの定義からは外れるものの、渋野のメンタル状態を考えれば15番と18番のバーディもバウンスバックと言っていい。わずかにカップをかすめてパーとなったものの、16番パー5(520ヤード)と17番パー3(172ヤード)でもチャンスを作った。