城氏が疑問「なぜアルゼンチン戦圧勝のU-24代表はOA枠をテストしなかったのか」
ただ課題も浮き彫りになった。連携力不足だ。先制点は、瀬古からの縦パスに反応した林が裏に抜け出しボールをうまくコントロールしたものだったが、連携でアルゼンチンの守備陣を崩すシーンは、ほぼ見られなかった。相馬は左サイドからドリブルで何度か切り込んだが、サポートがないため、1対1の状況を作られて精度のあるクロスを供給できなかった。 東京五輪まで残り4か月を切った。この短期間で連携力を養うのは至難の業。日本は課題を抱えたまま本番を迎えなければならない。 その部分も含めてチームの弱点を補うために浮上する切り札がOA(オーバーエイジ)枠選手だ。だが、横内監督はメディアの取材に対して、具体的な人選を答えることができなかった。そもそも、今、誰をどこに入れるのかの議論をしているようでは遅い。東京五輪本番までに国際親善試合が、残り4試合用意されているようだが、そこでOA枠をテストしているようでは、準備が遅すぎる。なぜ今回のアルゼンチン戦の2試合のうち1試合でOA枠を試さなかったのか。新型コロナ禍の影響で、海外組の招集が難しい中、A代表の主要メンバーは集めることができていたのだ。その中から候補選手をOA枠としてこの試合に使えばよかったのではないか。OA枠のメンバーが入るとガラリとサッカーが変わる。1試合でも早くコンビネーションを合わせておく必要がある。サッカーは即席では勝てないのだ。 五輪はW杯と違い18人しかメンバーを選ぶことができない。新型コロナの影響で代表活動がストップしたという特殊な状況があったにせよ、もっと早い段階から、12、13人の固定メンバーを決めて連携力を磨いておくべきだっただろう。そして、このタイミングでOA枠を使い、チームに誰がどうアジャストできるかを試せばよかったのだ。 この日、東京五輪の出場16チームが決まった。 ホームで迎える東京五輪では、グループリーグの組み合わせも含めてアドバンテージはある。グループリーグの突破は、最低限のミッション。メキシコ五輪以来、53年ぶりとなる悲願のメダルを獲得するため、その先を勝ち進むためにはOA枠は使うべきだろう。 ボランチ、決定力のあるFW、そして世界レベルで対抗できるプレーヤーで3つの枠をフルに使わないと勝てない。ただあまり個性の強い選手を入れると、ハレーションが起きる危険がある。呼ぶとすればボランチの遠藤。A代表でも存在感を示した。五輪世代のセンターバックの冨安が加われば、守備は安定するので、遠藤が攻撃に連携することができ、この試合で浮き彫りになった不安点の解消にはなる。 いい形でグループリーグを突破できればチームに勢いが出る。若手のチームには勢いが大事で、乗っていければ、金メダルは難しいとしてもメダル獲得の可能性はあると思う。だが、繰り返すが個のレベルにプラスして連携力を備えなければチャンスはない。 (文責・城彰二/元日本代表FW)