人が辞めていく「ザンネンな職場」で迂闊に口に出せないこと・ワースト1
「あなたの職場では、なんでもかんでも重く受け止められていませんか?」 そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。 それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「これって、おかしいことだったの!?」と、多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「思いつきが言いづらい職場」の問題点について指摘します。 ● 「思いつき」が言いにくい組織 「思いつき」 あなたや、あなたの職場は、この言葉にどのような印象を持っているだろうか? 「大歓迎! そこから新たな発想が生まれるからどんどん言ってほしい」 このように前向きに捉えている人もいれば、 「上司が思いつきでものを言う人で、現場はいつも振り回される」 「迂闊なことを言うと責められるから、油断できない……」 このような苦い経験を思い出し、イヤな気持ちになる人もいるだろう。 思いつき、もしくはジャストアイデア。これらの言葉に対する反応も、組織によって対照的なのである。 ● 思いつきはイノベーションや改善の種 モヤモヤ同様に、思いつきも決して悪いものではない。ちょっとした思いつきや何気ないアイデアが課題解決につながったり、新製品や新サービスを生むヒントをもたらしたりすることはよくある。 「ザクとうふ」や「うにのようなビヨンドとうふ」などのユニークなヒット商品を次々に生み出している相模屋食料(群馬県)という豆腐メーカーがある。同社の社長、鳥越淳司氏は「自分の思いつきを信じる」を新商品開発のポリシーの一つとして掲げている。 思いつきをとにかく大切にして、実現のための具体策や課題の解決策は後で考えればいい。この姿勢で、同社は過去20年間で売上高を23億円から400億円に成長させた。 ● 問題なのは向き合い方である 思いつきはイノベーションや改善の種なのである。それなのに言い出しづらくなってしまうのは、思いつきへの向き合い方に問題があるからだ。 ・思いつきがつねに重たく受け止められ、おおごとになる ・発言したことは必ず実行しなければならない ・思いついた本人が実行しなければならず、責任も負わされる これでは迂闊に思いつきを口にできない。 筆者にも経験がある。IT企業でシステム運用のマネージャーをしていた頃だ。既存の問題に対する改善策を思いつき、チームのミーティングで「余裕があれば検討したい」と発言したところ、その翌週に協力会社のリーダーから「ご指示いただいた内容につき、検討体制を立ち上げます」と仰々しい提案をいただいたことがある。 IT企業では自社といわゆる一次会社、二次会社など協力会社とでチームを組んで仕事をすることが多い。階層をまたいだ伝言の過程で、いつの間にか「余裕があれば」が「必達」に置き換わり伝わってしまったのだ。「階層構造、恐るべし」と思うと同時に、自身の発言の重さを認識したものである。 思いつきが重く受け止められたり、言った本人に丸投げされたりするような風土は、保守的な体質、失敗を許さない体質を加速させる。ひいては「信用できる人にしか発言できない」と疑心暗鬼になり、オープンなコミュニケーションがしにくい体質へと変わっていく。 ● 思いつきの「スルー」は、無力感を生む 一方で、その逆のケースも存在する。 ・思いつきを誰も受け止めてくれない ・発言しても放置される アイデアを出す(出させる)だけでは新たな挑戦や改善は生まれない。思いつきの垂れ流しが常態化され、やがて「言うだけ無駄だ」となってしまう。 重く受け止められるにせよ、軽く流されるにせよ、思いつきを言い出しづらい環境では、挑戦、創造、変化に対して前向きに考えたり、アジャイルにものごとを発信し解決する体質になりにくい。