「納豆日本一」に輝いた食品メーカーの粘り強い組織変革 4代目が意識した従業員への「声かけ」
親族外承継も見据えた人材育成
さらに関本さんは業績の推移を記録し、社員全員が閲覧できるようにしたほか、2カ月に1度、社員ミーティングを開いて情報を共有しています。 2019年ごろからは朝礼で、消費者からの声などを従業員により細かく共有しています。改善を求める声があった際も、一方的な命令として伝えるのではなく、その場で改善案を出し合ってもらっています。 従業員が以前より意見を言えるようになったと、関本さんは感じています。 「今や私がピリピリしている時も『声をかけづらいです』と指摘してくれます。実数字を前月、前年と見比べることで、現状を的確に把握できるようになり、改善策も生まれやすくなっています。従業員一人ひとりが自主的に考えるようになったことで責任感が芽生え、業務改善や効率化につながりました」 関本さんは数年以内の承継を目指して準備を進めつつ、その先も見据えた後進の育成にも力を入れています。 「納豆の発酵管理は職人技ですが、今は義父も現場からはほぼ離れており、仮に私が倒れても対応できる体制を作る必要があります。私の子どもたちが継いでくれるかはわかりません。社員にも継承できるよう備えなければと思っています」 関本さんは今後、納豆の海外展開を考えています。その意図をくんだ営業担当の社員が得意の英語を生かし、英語版のホームページを作成しました。「今は海外の営業も彼に任せています。月に500個程度ですが、日本の商社とタイアップし、台湾のスーパーに納豆を出荷しています」
売り上げは右肩上がりに
2020年からのコロナ禍は納豆市場に追い風となりました。「免疫力を高めたい」という需要が増えたからです。ただ、リモート商談が増え、契約前に顧客に工場を見学してもらうことができなくなりました。 そこで菅谷食品では、製造工程を伝える動画を制作し、ホームページで公開すると、問い合わせが増えました。 原材料や資材の値段高騰の影響で、2023年には2割値上げしました。それでも、関本さんが専務となった2016年ごろからの売り上げは前年を割ることはなく、ここ数年は平均して年約10%ずつ上がり続けています。