日銀・黒田総裁会見7月15日(全文1)新型コロナで景気は極めて厳しい状態
日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の15日午後、記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは、「日銀・黒田総裁が会見「必要なら躊躇なく追加金融緩和を行う」(2020年7月15日)」に対応しております。 【動画】日銀・黒田総裁が会見「必要なら躊躇なく追加金融緩和を行う」 ◇ ◇
現状維持を賛成多数で決定
産経新聞:幹事社、産経新聞の大柳です。時間なので総裁会見を始めたいと思います。よろしくお願いします。まず幹事社から2点質問させていただきます。本日の会合の決定内容と展望レポートについて総裁のほうから説明よろしくお願いいたします。 黒田:本日の決定会合では長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下での金融市場調節方針について現状維持とすることを賛成多数で決定しました。すなわち短期金利について日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利については10年物国債金利が0%程度で推移するよう上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行います。また長期国債以外の資産の買い入れ方針に関しても現状維持とすることを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITは当面、年間約12兆円、年間約1800億円に相当する保有残高の増加ペースを上限に積極的な買い入れを行います。CP等、社債等については2021年3月末までの間、合わせて約20兆円の残高を上限として買い入れを行います。
内外で新型コロナウイルス感染症の影響
本日は展望レポートを決定、公表しましたのでこれに沿って経済・物価の現状と先行きについての見方を説明します。わが国の景気の現状については経済活動は徐々に再開しているが、内外で新型コロナウイルス感染症の影響が引き続き見られる下で、極めて厳しい状態にあると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は持ち直しに向かう動きも見られますが、感染症の世界的な大流行の影響により大きく落ち込んだ状態にあります。そうした下で輸出や鉱工業生産は大幅に減少しています。企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は横ばい圏内の動きとなっています。 雇用・所得環境を見ますと感染症の影響が続く中で弱い動きが見られています。個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少してきましたが、足元では持ち直しの動きが見られています。住宅投資は緩やかに減少しています。この間、公共投資は緩やかに増加しています。金融環境については全体として緩和した状態にありますが、企業の資金繰りは悪化しているなど企業金融面で緩和度合いは低下した状態となっています。 先行きについては経済活動が再開していく下でペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、本年後半からは徐々に改善していくとみられます。もっとも世界的に新型コロナウイルス感染症の影響が残る中で、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられます。その後、世界的に感染症の影響が収束すれば海外経済は着実な成長経路に復していく下で、わが国経済はさらに改善を続けると予想されます。 次に物価ですが生鮮食品を除いた消費者物価の前年比を見ますと、原油価格の下落などの影響により0%程度となっています。予想物価上昇率も弱含んでいます。先行きについては消費者物価の前年比は当面、感染症や既往の原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられます。その後、経済の改善に伴い物価への下押し圧力は次第に減衰していくことや、原油価格下落の影響が剥落していくことから消費者物価の前年比はプラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられます。予想物価上昇率も再び高まっていくとみています。