日銀・黒田総裁会見7月15日(全文1)新型コロナで景気は極めて厳しい状態
2%の物価安定の目標実現を目指す
今回の経済・物価の見通しはいずれもおおむね前回の見通しの範囲内です。ただしこうした先行きの見通しは感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさによって変わりうるため不透明感が極めて強いと考えています。また今回の見通しは大規模な感染症の第2波が生じないことに加えて、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないことや、金融システムの安定性が維持される下で、金融仲介機能が円滑に発揮されることなどを前提としていますが、そうした前提にも大きな不確実性があります。その上でリスクバランスについては経済・物価のいずれの見通しについても感染症の影響を中心に下振れリスクのほうが大きいとみています。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。 また、引き続き、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムや、国債買い入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、ETFおよびJ-REITの積極的な買い入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていきます。その上で当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。
さらに追加措置が必要なのか
産経新聞:幹事社から2点目です。日銀は3月以降、新型コロナ対策として金融市場の安定維持と企業の資金繰り支援に向けた措置を相次ぎ打ち出してきました。その評価と、本日は現状維持ということでしたけれども、さらに追加的な措置が必要なのかお考えをお聞かせください。 黒田:日本銀行はご承知のとおり3月以降、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、国債買い入れやドルオペなどによる円貨、外貨の上限を設けない潤沢な供給、ETF等の積極的買い入れの、この3つの柱で金融緩和を強化してまいりました。こうした対応は効果を発揮しているとみています。内外の金融資本市場は、なお神経質な状況にありますけれども、一頃の緊張は緩和しています。企業の資金繰りには依然ストレスが加わっていますが、外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されております。金融機関の貸し出し態度は緩和的であり、CP・社債の発行環境も、一時的に拡大していた発行スプレッドが縮小するなど良好な状態にあります。こうした下で銀行貸出残高は前年比6%台半ば、CP・社債残高も前年比10%を超える高い伸びとなっています。 日本銀行としては引き続きこの3つの柱により資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく所存でありますけれども、その上で、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、先ほど申し上げたように必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる方針であります。 産経新聞:幹事社からは以上です。各社お願いをします。