パレスチナ支持者はなぜMoMAに抗議するのか。大物パトロンとの関係など、その背景を解説
「アートは権力者の視点に異議を唱える手段」
MoMAをはじめとしたニューヨークの美術館関係者は、ガザ戦争で増加した抗議活動への対応に苦慮しており、中には抗議を完全にシャットアウトするケースもあった。MoMAは今年3月、ケフィアを身につけていた来館者が警備員に入場を断られたことで炎上し、ケフィアを禁止する方針はないと謝罪。また、クイーンズ地区にあるイサム・ノグチ美術館では、新たに「政治的な服装」を禁止する内部規定を導入し、ケフィアを身につけて出勤した従業員を解雇したことで非難を浴びている。 環境活動家のグループ「Planet Over Profit(利益よりも地球を)」の中心メンバーで、WAWOGと協力しているリヴ・センゴールは、12日の抗議活動の現場でUS版ARTnewsの取材に応じ、次のように答えている。 「文化施設に資金を提供する大富豪たちが、その施設の運営方針や支援すべきアーティスト、さらには価値がないと見なす作品について、発言権を持たないと考えるのは甘いと言わざるを得ません」 12日にデモ参加者が配布した資料の一部には、2021年の「Strike MoMA」キャンペーンの書簡から次の一節が引用されていた。 「こうした複雑なしがらみがあるのだとすれば、我われは美術館(MoMA)の実態を見極めなければならない。美術館は、億万長者たちの多目的経済資産であるだけでなく、大がかりなイデオロギーの戦いの場でもある。そして裕福な彼らは、自らの評判を『磨き上げる』ためにそれを利用しているのだ」 今回の抗議活動ではローダーが標的にされたが、活動家たちは、美術館でも、生活の中でも、権力のヒエラルキーは一人の人間だけによって維持されることはなく、その解体にも多くの時間と、アーティストを含む人の力が必要であると強調していた。センゴールとともに活動の戦略策定を担当する務めるエレン・カン・リエリはこう言った。 「アートは権力者の視点に異議を唱える手段になり得ます。この戦いに勝つためにはアートが必要で、美術館に対して異議を唱え続ける必要があります。MoMAやホイットニー美術館、メトロポリタン美術館、ブルックリン美術館といった著名な施設の外側にあるアートを支援しなければなりません」 彼は人々でごった返す歩道に目をやり、こう付け加えた。 「そして、抗議を行う人々を支える必要もあります」 (翻訳:清水玲奈)
ARTnews JAPAN