パレスチナ支持者はなぜMoMAに抗議するのか。大物パトロンとの関係など、その背景を解説
活動家の拘束で一瞬緊張が高まったMoMAの入口
2023年10月7日のハマスによる大規模攻撃以来、ガザ地区に対するイスラエルの空爆や地上攻撃でのパレスチナ人犠牲者は4万人を超え、その半数以上が子どもと女性であることが明らかになっている。9月には、イスラエルがヒズボラや親イラン勢力を標的にした攻撃をシリアやレバノンに拡大。レバノンでは各地で壊滅的な被害を受け、世界遺産も危機に晒された。 MoMA前にバリケードが並ぶ中、次々とディナーにやってくるタキシード姿のゲストに向かって、抗議者たちは「恥を知れ」と叫んでいた。この日のイベント、「2024年テオドール・ヘルツル賞記念ディナー」は、今日のシオニズムの概念を理論化したハンガリー生まれのユダヤ人作家、テオドール・ヘルツルにちなんで名付けられている。 今年の受賞者は、外交官として各国のアメリカ大使を歴任したジョン・ハンツマンと、グラフィックデザイナーのタル・フーバー。ハンツマンは、ペンシルベニア大学がパレスチナ文学祭を主催したのを受け、ローダーとともに同大学への資金援助を停止すると発表したことで知られる。一方のフーバーは、昨年10月7日のハマスによる襲撃で多数のイスラエル人が連れ去られた後、世界中に広まったゲリラアートプロジェクト、「Kidnapped from Israel(イスラエルからの誘拐)」のポスター制作に携わった。 ゲストの中には、金属製のゲートに押し寄せた抗議者たちの群れの前を進まず、背を向けて引き返す人や、議論を仕掛けたが未遂に終わった人もいた。しかし、目についたのは、ゲストが抗議者を、あるいは抗議者がゲストを撮影する姿だった。警察官はデモ参加者とほぼ同じ人数が配備され、バリケードが増えるにつれ活動家との距離が狭まっていった。 そうこうするうち、MoMAは今にも暴発しそうな張り詰めた空気に包まれた。WAWOGの広報担当者サラ・ニコール・プリケットがニューヨーク市警の警官に手錠をかけられ、覆面パトカーの車内に押し込められると、抗議者たちが駆け寄り、何が不法行為だったのかと問いただす。一瞬、緊迫した空気が流れ、数人がパトカーの進路を塞いだが、逮捕されるのを避けるためすぐにその場を離れていた。その後、罪状は信号無視での横断(10月現在ニューヨーク市では犯罪ではない)だという話も、警察の嫌がらせだという主張も聞かれた。逮捕現場に居合わせた警察官に聞いてみたが、答えは「わからない」だった。 US版ARTnewsはMoMA、ニューヨーク市警、ローダーにコメントを求めたが、記事執筆時点で回答は得られていない。