不祥事に揺れる野村証券が打った「再発防止策」は社員の監視強化、強盗殺人未遂に先物相場操縦で業界の信用に傷
結局、11月6日になってようやく正式な公表を行ったが、遅きに失したとの批判は免れない。 こうした対応については、12月3日の会見でも報道陣から「個人の責任だとして(会社側は)軽く受け止めていたのではないか」と厳しい質問が寄せられ、謝罪を迫られる場面もあった。ある業界関係者も「対面証券のビジネスモデルを揺るがしかねない事件。事件把握から逮捕まで3カ月もあったのに、逮捕後速やかに対応策を出せなかったのは不思議だ」と首をかしげる。
■懸念される業界の「信用」 業界に与える影響も懸念される。野村証券をはじめとする対面証券は、取引時の手数料に依存する収益構造から脱却するため、残高ベースの報酬体系に舵を切っている。一定以上の資産を持つ顧客に丁寧な運用アドバイスを提供し、顧客資産の最大化を目指す「ストック型ビジネス」への転換だ。 このビジネスモデルは顧客の資産状況を把握することが前提となるが、今回の事件のようにその情報を悪用することがあってはならない。そもそも証券会社に対する信頼がなければ、顧客も安心して資産運用を任せることはできない。その意味で、今回の事件は業界の信用を傷つけたと言える。
これまでのところ、事件に関連する他社への問い合わせは「それほど多くはない」(証券会社幹部)ようだ。だが、せっかく市場が好調な折に顧客が証券会社との取引に不安を覚えるようなことになれば、ビジネスモデルの転換や収益機会に水を差すことになりかねない。 野村証券が掲げた社員に対する監視強化の実効性も未知数だ。というのも、野村証券では社員が休日に顧客の自宅を訪問する際、上司の事前承諾を得るルールが従前からあった。しかし、会見では事件を起こした元社員がこのルールを守っていなかったことも明らかになった。
事件翌日の月曜日に、前日に訪問した顧客宅が火事になったことを報告した際、事前に聞いていなかった上司はルール違反について特に叱責しなかったといい、ルールがきちんと守られる体制になっていたのか疑問が残る。新たなルールを作っても、それがきちんと守られなければ意味がない。 ■野村の営業カルチャーとの関係は 事件の背景として、営業担当社員に対する過度なプレッシャーや、数字を求める企業文化があったのではないかとの質問も相次いだ。奥田社長は「カルチャーに対する指摘については真摯に受け止める。対策をもっと強化して、二度とこうした事案は起こしたくないと思っている」と答えた。