14歳年上の俳優と結婚、38歳で双子男児を出産…45歳になった仲間由紀恵の“気負わない生き方”「どうせ思い通りにはいかないはずなので…」
森光子の『放浪記』林芙美子役を引き継ぐことに
舞台ではこのあと、28歳だった2007年に『ナツひとり 届かなかった手紙』に主演した。同作はその2年前に放送され、戦前にブラジルへ家族と渡ったハルと日本にひとり残されたナツの姉妹を描いたドラマ『ハルとナツ 届かなかった手紙』のスピンオフ的作品である。このドラマで仲間は妹のナツの若き日を演じたが、舞台ではさらに彼女の14歳から76歳までを演じきってみせた。なお、ドラマでは老年期の姉妹のうちナツを『トリック』で仲間の母親役だった野際陽子、ハルを森光子が演じていた。森は舞台版にも声のみながら出演している。 森との縁は彼女が2012年に亡くなったあとさらに深まり、2014年にその人生を描いたドラマ『森光子を生きた女』に主演し、翌2015年にはさらに森のライフワークだった舞台『放浪記』の主人公で小説家の林芙美子の役を引き継ぐことになる。 あまりの大役に仲間もオファーをもらったときには驚いたが、森と『放浪記』の作者の劇作家・菊田一夫のいずれも知る俳優の石坂浩二は、《菊田先生のたくさんの戯曲の中でも、先生の思い入れも深く、本当にトップになるような名作だからこそ、いろんな人が挑戦することが望ましいと思う。その先駆けとして仲間さんがやるというのは、もう他に居ないなという気がしてならないんです》と、彼女との対談で太鼓判を押した(『文藝春秋』前掲号)。石坂の言葉にも後押しされ、仲間は新しい『放浪記』をつくろうと意気込み、公演に際し森の見せ場だったでんぐり返しも側転に変更して話題を呼んだ。
じつはこの前年、彼女はあるインタビューで《今後は「女の一生」をテーマにしたようなスケール感のある作品や大きな舞台など、やったことのない役柄に挑戦したいと思っています》と語っていた(『厚生労働』2014年1月号)。『放浪記』はまさにこれに当てはまる。
共演の吉高由里子が語った「仲間さんが現場にいないと…」
『放浪記』と前後してNHKの朝ドラ『花子とアン』(2014年)で演じた実在の歌人・柳原白蓮がモデルの葉山蓮子も、年下の男性と駆け落ちするなど激しい人生を送った女性であった。 同作では、蓮子の女学校時代の学友であるヒロイン・村岡花子を吉高由里子が演じた。吉高は当時の仲間との対談で、劇中で二人が決別してしばらく共演シーンがなかったときを振り返り、《私がこのころ痛感したのは、仲間さんが現場にいないとみんなだらしないってこと!》、《仲間さんがいるとね、秋口のひんやりとした風を感じたときのように、背筋がしゃんと伸びるんです》などと語っている(『ステラ』2014年9月5日号)。現場にいい意味で緊張感をもたらすとは、このころの仲間が30代半ばにしてすでにベテランの風格を漂わせていたということだろう。