「右の親指が上にきたら左脳タイプ」右脳派、左脳派に根拠はあるの?
今回、WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」で取り上げるのは「『右脳派』『左脳派』に根拠はあるか」について。ちまたで耳にする「右脳派は直感的で、左脳派は論理的――。この理屈は本当に正しいのでしょうか。同番組のレギュラー・菅原通仁医師に教えていただきました。 【動画】やわらかいロボットで人間の知能を紐解く!
右脳派、左脳派の起源はどこから?
Q:20代女性です。友達と話していて気になったのが「私は右脳派」「あなたは左脳派だよね」という言葉。勝手に決めつけられて、なんだかモヤモヤします。また左脳派と断言された理由が「指を組んだとき右手の親指が上にきたから」だそうですが、これって根拠があるのでしょうか。 ――右脳派は直情的で創造性に富み、一方で左脳派は物事を論理的にとらえて判断する、そんな風説が世の中にあります。 人の思考が右脳派と左脳派ですっぱりと分けられる――。結論から言ってしまうと、この説に根拠はないと私は思います。 ――なぜこのような説が生まれのでしょうか。 発端は、てんかん患者の研究で1981年にノーベル賞を受賞した米国の神経科学者、ロジャー・スペリー氏の研究だといわれています。この研究は、左右の大脳半球をつなぐ神経繊維の束、脳梁(のうりょう)を切断した患者がさまざまな作業を行った結果、左右2つの脳半球がそれぞれ独立した機能を持っていると実証したものです。 ロジャー氏はこれをさらに一歩進め「非言語的(右脳型)」思考と「言語的(左脳型)」思考があると結論づけました。 ――そう聞くと、根拠があるような気がします。 この実験はあくまで、脳梁が切断された特殊な状態で行った場合、という前提があります。ところが実際、人間の脳梁はつながっている。おそらくはこの結果が拡大解釈され、右脳派と左脳派の考え方が生まれたのではないかと思います。 今回の質問に出てきた「両手を組んだとき、親指が右手の親指が上なら左脳派」という流説も、その延長上にあるのかと。 人の左脳は右半身、右脳は左半身を交差して管理しています。これに右脳派、左脳派の理屈を重ね合わせ、さらに「指が上になった方がなんとなく優勢そうだから」という感覚が入り、このような話がつくり出されたのではないでしょうか。 この極論をさらに都合よく展開すると「右利きの人は想像力が低い」という話にもなりかねません。でももちろん、そんなことはないですよね。右利きでクリエイティブな活動をしている人はたくさんいらっしゃいます。