「戒厳令」混迷の韓国を金正恩氏はどう見る?「兵士の血で稼いだ金」で北朝鮮は2025年どう動くか
12月3日深夜、韓国の尹錫悦大統領が突然宣言した「非常戒厳」によって、韓国は今も混迷を極めている。 【画像】2019年6月にトランプ大統領が訪朝した際のようす 非常戒厳を尹大統領に進言したとされる金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相をはじめ、戒厳に深く関与した軍の司令官がすべて逮捕され、捜査を進める警察のトップにも手錠がかけられた。検察や警察の合同捜査本部は尹大統領に出頭を要請し、現職の大統領が史上初めて逮捕される可能性もささやかれる。 ソウル市内では今も尹大統領の責任を追及する声が響き続けている。 お隣、北朝鮮は「第一の敵対国」の混乱をどうみているのだろうか。 北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は12月11日、「独裁の銃剣を国民にちゅうちょなく突きつける衝撃的な事件で、韓国全土を阿鼻叫喚の状態に陥れた」と報じた。 しかし、記事は事実関係が中心。罵詈(ばり)雑言で埋め尽くされるいつもの記事と比べると批判のトーンは抑えめだった。 報道自体も非常戒厳宣言から8日後。朴槿恵元大統領の弾劾訴追案が成立した際、数時間後に報じていたのとは全く趣が異なる。 “敵失”に乗じて非難の嵐を展開してもおかしくないところだが― 金正恩総書記は今、韓国をどのように見ているのか。 そして2025年はどのように動くのだろうか。
北朝鮮にとって韓国は“ただの壊れたATM”
「北朝鮮も韓国の非常戒厳宣言に驚いただろう。しかし、彼らは今回のような韓国内部の危機を利用する必要も、能力も、意思もない」 北朝鮮の金日成総合大学への留学経験があり北朝鮮情勢に詳しい韓国・国民大学のアンドレイ・ランコフ教授は冷静に分析している。 「北朝鮮は韓国を非常に冷ややかに見ている。(北朝鮮にとっての韓国は)乳の出る乳牛、ボタンを押すと金が出てくるATM(現金自動預け払い機)だ。問題はそのATMが故障したことだ。北朝鮮にとって韓国は今や価値がない、役立たずの機械に過ぎない」と指摘した。 北朝鮮が欲しがるのは「カネと物質的な支援」だが、国連の対北朝鮮制裁措置により北朝鮮へのヒト、モノ、カネの流れが規制されている。経済的支援ができない上に、尹大統領が北朝鮮に強硬な姿勢をとり続ける今の韓国は「ただの壊れたATM」だという。 さらに保守派の尹政権から進歩派(革新系)の最大野党「共に民主党」に仮に政権が代わったとしても状況は変わらないとみる。 アンドレイ教授は「共に民主党は依然として北朝鮮を支援する考えがある。考えはあるができない。経済支援は国連安保理決議違反だから。保守派でも進歩派でも支援ができなければ大きな違いはない。北朝鮮にとってはどちらもただの壊れたATMだ。それを直せるのはアメリカ大統領だけだ」と語る。