「戒厳令」混迷の韓国を金正恩氏はどう見る?「兵士の血で稼いだ金」で北朝鮮は2025年どう動くか
兵士の血で稼いだ金が軍事と「世界最大の廃墟」に…
「北朝鮮はロシアから受け取った金を真っ先に軍事発展に投資して、その次はきれいに見える建物をたくさん作るだろうと」(アンドレイ教授) 北朝鮮が押し進める核・ミサイル開発だけでなく、きれいな建物とは――。 「残念なことに北朝鮮は金ができればプロパガンダ建物を作り始める傾向がある。 例えば、ほぼ40年間完成していない柳京(リュギョン)ホテルのように」とアンドレイ教授はいう。 「柳京ホテル」とは北朝鮮が1987年に建て始めたビルで「世界最大の廃墟」とも呼ばれている。1988年のソウルオリンピックに対抗して1989年に開催したとされる世界青年学生祭典に合わせて建て始めたものの、途中で何度も建設が中断され、結局今も完成していない。 高さ330メートル、105階建てのピラミッド型のホテルは今まで1人の客も受け入れたことがなく、1992年に「世界で最も高い空虚ビル」としてギネス世界記録に認定された。 北朝鮮は1970年代に海外で多くの資金を得たが、その金で主体思想塔や凱旋門を建設するなどプロパガンダに投資したという。 「北朝鮮は軍事開発、核開発、そして平壌をはじめとする大都市を美しくするために、北朝鮮兵士の血で得た金を浪費する可能性が高い」とアンドレイ教授は見る。 韓国の情報機関「国家情報院」はロシアに派兵された北朝鮮兵について、死者が少なくとも100人に上り1000人以上が負傷したとの見方を示している。 ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、北朝鮮兵の死傷者は3000人を超えていると指摘している。 韓国軍の合同参謀本部は北朝鮮が2025年も「ロシアという後ろ盾を背負って、対米交渉向上のための大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射、核実験など多様な戦略的挑発の試みの可能性が高い」と分析している。
「正恩氏はほぼ確実にロシアを訪問」2025年、戒厳令めぐる韓国の混乱の行方は―
ロシアと北朝鮮の関係強化がより進むとみられる2025年。 アンドレイ教授は「金正恩総書記はほぼ確実にロシアを訪問するだろう。おそらく5月9日だ」と分析。 ロシアが第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した「戦勝記念日」である5月9日に合わせて金総書記がロシアを訪問する可能性が高いと予測する。 2025年5月頃と言えば、韓国の尹大統領の弾劾が憲法裁判所で認められれば、大統領選挙が行われている可能性がある時期だ。 大統領選挙の最も有力な候補と言われる最大野党「共に民主党」の李在明代表をめぐっては、公職選挙法違反の罪に問われ一審で有罪判決が出ているが、この頃までに司法判断が確定するともみられている。有罪判決が確定すれば大統領選に出馬することはできず、選挙戦の構図は大きく変わることになる。 2025年の春は尹大統領の「非常戒厳」に端を発した韓国の混乱に、ロシアとの関係を深める金総書記の動向が加わり、朝鮮半島にさらなる注目が集まることになりそうだ。 (FNNソウル支局長 一之瀬登)
一之瀬登