イーロン・マスクはなぜトランプに賭けるのか…踏み台?政界進出?それとも利益率でBYDの半分のテスラ生き残りのため?
イーロン・マスクが「政府効率化省」長官?
いよいよ第二次トランプ政権が、1月20日からスタートする。新政策として、何が飛び出してくるか? 【写真】「Civil War(内戦)」から読み解くトランプ現象とアメリカの絶望 取り沙汰される閣僚の顔ぶれが破天荒なこともあって、政策の新しさにこだわると、見当が狂うかもしれない。例えば保健省長官が予想されるロバート・ケネディ・ジュニアは、元麻薬中毒患者で、ワクチンを否定している。 そこで決め手になるのは、予想する側としても、またトランプ自身としても、実現しやすい政策か、目先の反響が大きい政策か、結局、いわば無難な政策が並ぶだけかもしがれない。 大統領就任後24時間で、ウクライナ戦争の停止をプーチンに約束させるとトランプは豪語する。既に裏で交渉が進んでいれば、実現しないとも限らない。だが、当事者でもあるEUの首脳の言動からは、根回しがすすめられている気配は感じられない。だからといって油断はできない。 中国からの輸入品に高い関税を課するつもりのようだが、これは手続きに時間がかかる。不法移民の送還も同じだ。 やはり最初に打ち出されるのは、世界保健機構(WHO)のような国際機関からの脱退、そして内政問題での一番手は、連邦予算の大幅削減の発表になるだろう。こちらは数字を並べるだけでも効果絶大だ。 では、1月20日、ニュースのどこに注目すればよいのか? 実は迷う必要がない。当日のイーロン・マスク(テスラのCEO)の振る舞い、就任式での彼の処遇が鍵になる。 昨夏、とにかく驚かされたのは、投票3ヶ月前の2024年8月になって、にわかにトランプが「政府効率化省」構想をぶち上げ、長官にテスラCEOのイーロン・マスクを据えると言い出したことだった。
看板倒れか、連邦予算削減提案の狙いと効果
新しく省庁を設置するには、議会が承認しなければならない。だから、実際には、せいぜいホワイトハウス内の委員会止まりだろう。それを百も承知で持ち出したところからして、人気取りが目的で、実現は二の次かもしれない。 このアイデアはマスクからの提案だった。さすがはマスクで、彼一流のめざとさには、いやでも感心させられる。とはいえ、実は、「いかなる意味でめざといか」? それこそが問題なのだ。 現在のアメリカ連邦予算は年6.5兆ドル、マスクの提案によると、それを4.5兆ドルへと、何と一挙に約30%も削減可能というのだ。内政予算の削減は反対が予想されるが、海外援助予算は切ることができる。切っても、トランプの任期の4年ぐらいは実質的影響が低く、やりすごせるとソロバンをはじいたのだろう。但し国際的な実害としては、計り知れないほど甚大な結果をまねくことになる、と思っていなければならない。 マスクの事業は利潤の60~70%を衛星通信も含む宇宙分野、つまり政府事業からあげているため、彼は入閣はできない。利益相反になるからだ。しかし、かえってそれはマスクにとって都合がよい。言いっ放しで、責任はかかってこない。彼は名前を貸すだけ、せいぜいトランプと一緒に演壇にときどき乗り、応分の献金をするだけで、トランプに食い込むという「大きな見返り」を獲得できるという皮算用だ。 但しマスクの場合、応分といっても、献金額は大きい。トランプの再出馬応援で、合計するとその額は2億6200万ドルに達したと伝えられる。