足が動かない人や目の見えない人が、バイクでさっそうと風を切る。障害がある人の「やりたい」を叶える「Side Stand Project」
障害を持つ多くの人に影響を与えた青木拓磨さん本人も、午後の部から参加した。走行中、前輪を持ち上げて後輪だけで走る「ウィリー」という技を披露し、スタッフたちが沸く。 「見ましたか? 今の拓磨さんの走り。ありえないです。僕もバイクは長く乗っていますが、五体満足の僕より間違いなくうまい。障害って、一体なんだろうと思いますよ」と話すのは、ボランティアマネージャーの杉本さんだ。 バイク店を経営する杉本さんはもともと青木兄弟と親しかった。プロジェクト発足以来、毎回イベントに駆けつけてはボランティアマネージャーとして動いている。 「『障害者はみんないい人で、社会と繋がりたいけど繋がれない被害者だ』という偏見が、世間にはあると思う。でも違うんです。ハンデのあるなしにかかわらず、いい人もいればいやな人もいます。以前、スタッフに向かって、『おい、ヘルメット!』と横柄に命令した参加者がいて。それはおかしい。ライダーとスタッフは対等です」 自分でできることは自分でやってもらう。スタッフはあくまでサポートをするだけだと、杉本さんは言う。 「この活動を誰かのためにやっているなんて思っていません。もし自分が障害を負ってもバイクに乗り続けたい。乗れるものなら這ってでも乗ろうと思う。その気持ちが痛いほどわかるから、参加者をサポートするのは僕の喜びでもあるんです」 杉本さんの言葉に、イベントの雰囲気が心地よい理由がわかった。健常者と障害者の間の垣根がまったく感じられないのだ。それは、「やってあげる」という気持ちからではなく、各々が純粋に楽しんでいたからだろう。 (撮影=木村直軌)
古川美穂