日本の火山観測は「世界トップレベル」なんと、10キロの棒が1ミリ傾くレベルを測れる…!それでも、「富士山噴火の予知は至難の業」のワケ
「明日かも」しれないし、「数年後かも」しれない
わが国では活火山を所掌する気象庁と、各大学をはじめとして、国立研究開発法人である防災科学技術研究所、国土地理院、産業技術総合研究所などが約50の活火山に観測網を展開し、そこで得られたデータは気象庁によって24時間監視されている。 そうした観測結果をもとに、われわれ地球科学を研究する者は「火山学的には富士山は100パーセント噴火する」と説明している。しかし、最初の噴火予兆である低周波地震がいつ始まるかを前もって言うことは、現代の科学技術でもまったく不可能である。 たしかに低周波地震の発生から噴火までには数週間~1ヵ月ほどの時間を要することは予測しているが、「噴火の数週間~1ヵ月前」というスタートは、明日かもしれないし、かなり先の数年後かもしれないわけである。だが少なくとも、スタートしてから数週間~1ヵ月ほどの時間的な猶予はあるので、その間に可能なかぎり準備と対策を講じるべきだと言っているのである。 噴火予知は地震予知と比べると、実用化に近い段階にまでは進歩してきた。しかし、一般市民が知りたい「何月何日に噴火するか」に答えることは、残念ながら現在の火山学ではできない。仮に「何月何日に噴火する」といった風評がメディアやインターネットなどで流れても、科学的根拠はまったくないので信用しないでいただきたい。 * * * 地震予知の5つの要素のうち、「いつ」「どこで」については、具体的な日付の予知はできないまでも、観測生精度の向上で、予測できるようになってきたことがわかりました。では、ほかの3つの要素「火山の様式」「規模」「推移」はどうでしょうか。これには、マグマの変化をとらえることが重要といいます。 富士山噴火と南海トラフ 海が揺さぶる陸のマグマ 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震。あの大震災によって、富士山は「噴火するかもしれない山」から「100パーセント噴火する山」に変容してしまった。そのとき何が起こるのか。南海トラフ巨大地震との連動はあるのか。火山の第一人者が危機の全貌を見通す!
鎌田 浩毅(京都大学名誉教授)