日本の火山観測は「世界トップレベル」なんと、10キロの棒が1ミリ傾くレベルを測れる…!それでも、「富士山噴火の予知は至難の業」のワケ
地殻変動を「ミリメートル単位」で計測
GNSSとは全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)のことで、複数の衛星から電波を受け取るアンテナを地上に設置し、自分の位置を正確に把握するしくみである。これはカーナビにも用いられているGPS(全地球測位システム)や、QZSS(準天頂衛星システム)、GLONASS(ロシアの衛星測位システム)、Galileo(EUの衛星測位システム)などを総合したものであり、原理としてはGPSと同じである。 最新のGNSSによって、二つの地点の距離を水平方向で1センチメートル、垂直方向で数センチメートルの精度で測定することが可能になった。精度はさらにどんどんよくなっていて、ミリメートル単位の測定も可能になってきた。 このくらいの精度があれば、地下のマグマの移動によって起きる地殻変動を、かなりくわしく把握することができる。そこで火山体を取り巻くように、GNSSを複数の観測点に設置しているのだ。GNSSによって観測された地面の移動は、国土地理院がインターネットで公表しており、ほぼリアルタイムで見ることができる。
2つの「超ハイテク計測器」その役割分担
さらに最近では合成開口レーダー(SAR)も使って地殻変動がとらえられるようになってきた。 SAR(synthetic aperture radar)とは、人工衛星や航空機にレーダーを搭載し、マイクロ波を発射して地表との距離を精密に測るシステムである。人工衛星や航空機は上空を移動するので、地面が動いた距離を何回も測定することが可能である。したがって、火山の地面の動きが時間ごとにどう変化したか、すなわち地殻変動量を測定することができる。 GNSS観測では地上の2点間の変位がわかるだけだったが、SARによる観測では、平面全体の変動をとらえることができる。 地表を線的に観測するGNSSと、面的に観測するSARを併用することによって、地殻変動の時間変化をより三次元的に把握できるようになったのである(図「GNSSとSARによる地殻変動の観測」)