【5番勝負】ホンダEクラッチ vs ヤマハY-AMTを比較試乗! 制御が巧みなのは? 乗っていて楽なのはどっち?【インプレ】
Y-AMTのATモードで走っていると、スロットル開度によってシフトする回転域が変わっていくが、シフトアップは基本的にスムーズ。前述のようにダイレクト感を重視した設定のようで、力強くシフトが押し込まれる“ガション!”という音が勇ましいが、極めて出来のいいクイックシフターを自分で操作したのと同じように、少ないショックで素早くシフトアップしていってくれる。 シフトダウンについては、ATモードで走っていると3~6速では3000rpmを割り込まないよう早めにシフトダウンする設定になっているのだが、低い回転域だと自動ブリッピングで回転合わせをすることなく半クラッチでシフトショックを逃がす設定のようだった。ライダーには自然なエンジンブレーキを伝えるのみだ。 2速および1速への自動シフトダウンは、ギヤ比が開いているためか、もっと回転が下がってから行われる。2速へのシフトダウンは上のギヤ同様に半クラッチでショックを逃がすのだが、停止する手前で1速に落ちる際には半クラッチをともなわずにシフトダウンするのが基本のようで、場面や路面状況(その手前で使っていた回転域やスロットル操作によるものか?)によってはリヤタイヤが一瞬スキップすることもあった。ここはさらなる煮詰めを期待したい。
【結論その1】
ホンダは2010年7月発売のVFR1200Fをはじめ多くの機種にDCTを展開してきただけあって、やはりクラッチの自動制御に一日の長を感じさせた。Eクラッチもあらゆる場面を想定してテストし、セッティングを練り込んでいる印象だ。シフトショックもEクラッチのほうが格段に少ない(というかほぼない)。Y-AMTも基本レベルは高く感じられるものの、搭載モデルがMT-09ということもあってスポーツ性やダイレクト感の演出が強めに感じられ、時としてそれが挙動に粗さとして表れることも。細部を煮詰める余地はありそうだ。
【その2】低速の取り回しやUターンが得意なのはどっち?
発進した後、巡航速度で走っているぶんにはどちらも快適だが、気になるのは低速での取り回しだろう。ステアリングをフルロックまで切ってUターンをするような場面はそれほど多くないだろうが、通常のUターンやエンジンをかけながら押し歩きをする場面は日常的にもよくあるんじゃないだろうか。 ここではクラッチレバーを持たないY-AMTから見ていくことにしよう。 思ったよりもかなりイケる、というのが正直な印象だ。クラッチ操作の比較でお伝えしたように低めの回転でクラッチが繋がり、いったん繋がるとアイドリング近くまで回転が落ちても簡単には駆動力が途切れず半クラッチ状態で待ってくれる。不用意にクラッチが断続する心配がないので安心して速度を落としていくことができ、低速ターンには不安なし。ステアリングフルロックに近い極低速Uターンになると、スロットルをわずかに開けながらリヤブレーキで速度を調整するという操作方法でバランスを取ることになるが、こちらも慣れればさほど不安はない。 一方で、バイクを降りてエンジンを掛けたまま押し歩きする場面では注意が必要だ。速度コントロールはスロットル操作とフロントブレーキに頼るしかなく、グリップに不安のある未舗装路などでは繊細な操作が求められそう。 ──Y-AMTのUターンは、車体を直立させていればフルロックもさほど難しくはない。一方、押し歩きではとっさのときに駆動力が切れないこを頭に入れておく必要がある。※押し歩き写真は同時取材のヤングマシン誌で同行した丸山浩さん