「熱電変換材料」実用化近づく…物材機構、テルル使わず最高性能を達成
物質・材料研究機構(NIMS)のワン・ロンクァンNIMSジュニア研究員と森孝雄グループリーダーらは、希少元素のテルルを使わずに熱電変換材料の最高性能を更新した。マグネシウムとアンチモンの合金にインジウムを添加する。425度の温度差で熱電変換効率が12・6%になった。単一素子では世界最高になる。工業利用されている元素で構成でき、実用化に近づいた。 マグネシウム・アンチモン合金にインジウムを加え焼結時にマグネシウムが蒸発することを防いだ。欠陥による微細構造の乱れが抑えられたため電子が移動しやすくなった。 同時に結晶の歪みが生じてフォノン(音子)が移動しにくくなった。音子は熱を伝える。熱電変換材料は電流を促し、熱流を遮ると変換性能が向上する。性能指数のzTは室温で0・5、450度Cで2・0になった。従来の2・0を超える物質は毒性元素や希少元素を使うため実用化が難しかった。 変換効率は425度の温度差で12・6%、200度差では約6%になった。現在、320度C以下の低温廃熱は9割が利用されずに捨てられている。有効利用できると脱炭素につながる。