多彩なシニア世代をひきつけ成長する植木屋 自然と接する自由な働き方を実現
研修費を引き上げたら応募者が逆に増えた
――カットデザイナーになることは難しいですか。また個人事業主として作業用の軽トラックの購入費や研修費などを負担するそうですが、初期費用はどのくらいかかりますか。 ざっくりと言えば、履歴書が100通来たら、採用するのは1、2人程度で、それくらい厳しい世界です。お客様の家の敷地に入る仕事なので、人柄をみます。適性や働く意欲、素直な気持ち、家族の賛否も聞きます。楽な仕事ではなく、時には危険も伴うので、誰もが出来るものではありません。 昨年(2023年)までは年間25人程度採用していましたが、今年は50~60人採用しています。今年から研修費を33万円から100万円に引き上げました。 その中には、ヘルメット、ユニフォーム、道具代に加え、合宿研修費(食費込み)が含まれます。応募者が減るかと思ったら、逆に増えました。本気度がある人が増えたのだと思います。 軽トラック代も含めて、初期費用として合計200万円程度かかります。売り上げの半分が自分の収入となり、そこからガソリン代などの経費を自己負担します。200万円は半年、遅くても1年以内には回収できます。最初は信じてもらえませんが、「こんなに仕事があるのだ」と驚かれる方が多いです。 【写真説明:お庭きれいサポーターの北川幸子さん(75歳・主婦)は、子供の頃から道端の草花を見るのが好きで、自宅の庭では山野草を育てている。虫も平気。この仕事を知った際、「こんな仕事があるの? やってみたい!」という強い思いから応募。さまざまな人と一緒に働く楽しみを感じながら、毎回ルンルンとした気持ちで仕事場に向かう。現場に着くと「私の庭だ!」と思って作業するという。(写真提供:クイック・ガーデニング、撮影:照井賢久氏)】
空き家問題で都会も地方も「庭の手入れ」が悩みに
――首都圏などでは、庭をコンクリートで固める⼾建て住宅も多くみられますが、今後の需要の見通しについて教えてください。 弊社が都市型の植木屋であることは間違いありません。住宅密集地ほど、庭の木が伸びると近所から苦情が寄せられる傾向があります。例えば東京・新宿でイチョウの木の高さが3mになったら隣家から苦情が出る一方、地方では家と家が離れていれば、20mになっても苦情は出ません。 ですので、人口密集地域が主な活動範囲と思っていましたが、一方で空き家問題は都会でも地方でも起きています。都会であれ田舎であれ、実家の庭の手入れをどうするかを皆、悩んでいるのです。 誰に頼んだらよいのか分からない中、ネット検索や提携先のホームセンター、生協などで弊社を知った方から、剪定の依頼がきます。 ――クイック・ガーデニングが果たす社会的な役割をどのようにお考えですか。 まずは住環境への貢献があります。1軒のお宅が、草がボウボウに生い茂り、放置されていると隣の家もそうなるケースがあります。一方、1軒が剪定してきれいになると隣もそうしたくなる。 また、敷地が広いアパートなども、所有者が高齢者になり、手入れが出来なくなっているケースがあります。アパートをきれいにすると、周りもきれいにしたくなる相乗効果が生まれます。 さらに最近では、防犯効果も注目に値します。首都圏で相次いで起きた強盗事件では、犯人がリフォーム業者を装って下見していたことが報道されました。 草がボウボウで生け垣が伸びていると、空き巣などから狙われやすいのです。生け垣の高さを1.4mにすると家人と目が合う。泥棒からするとターゲットにしにくい。また、庭に草が生い茂っていると、ゴミも捨てられてしまう傾向があります。