「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」が開幕! ゴームリー、ニキータ・カダン、MADアーキテクツなど新作を中心にレポート
津南エリア
最後は津南エリアの作品群。越後妻有里山現代美術館MonETでも展示を行っているニキータ・カダンは、東京電力信濃川発電所連絡水槽に新作《別の場所から来た物》を制作した。 子供が遊ぶ公園の遊具をイメージして制作されたこの作品は、ロケットと衛星を金属で形作った2つの作品で構成される。 カダンは本作について、自身が拠点としているキーウの公園にあるソ連時代につくられた遊具をモデルにしていると説明。宇宙をモチーフにした公園の遊具は、ガガーリンが宇宙飛行に成功した1960年代以降、人類の進歩や宇宙の植民地化への野望、夢を表すポジティブなものとしてよく見られるようになったという。 「現在こうしたロケットなどの形をした遊具のうえに、ロシアがロケットを落とし、爆撃をしているのを見ている。多くのものを破壊し、人々の見方を変えてしまった」と話すカダン。いずれも大きな作品だが、来場者は離れた場所からしか見ることができない。手の届かない幸福な空間、そして過ぎ去った幼年時代を想起させ、「入ることのできない公園」としてこの場に出現している。 越後妻有のなかでも最深部、新潟県と長野県にまたがる秋山郷では、2021年に廃校となった小学校の建物を活用した「アケヤマ -秋山郷立大赤沢小学校-」が展開されている。 標高700mに位置し、冬は雪で道が寸断されるこの地では、山の動植物の恵みを受けながら人々が生活を営み、独自の文化を作ってきた。「アケヤマ」では、2022年から秋山郷の調査を行う深澤孝史の監修のもと、「人間の生活の力を再び手にいれるための学校」として会場を構成した。 井上唯が現地で活用してきた様々な草木を使って制作した巨大な作品《ヤマノクチ》、秋山郷で行われてきた行事や信仰の営みをテーマにした内田聖良の《カマガミサマたちのお茶会:信仰の家のおはなし》をはじめ、いずれも作家たちがこの地に伝わる文化を取材して構想した作品群が並んでいる。 「大地の芸術祭」で今年公開される新作や新展開を見せる作品は上述した作品をふくめ80点を超える。さらに新作だけでなく、これまでに作られてきた作品も各地に点在している。会期は11月10日まで。ぜひ時間を見つけて何度も足を運んでほしい。
Minami Goto