カーリングのソチ五輪金メダル”強豪”カナダを破ったロコ・ソラーレ初勝利から見えたメダルの可能性とは?「4年でみんな成長」
公式練習時と性質を異にするだけでなく、試合に入っても時間の経過とともに状態が変わる氷面に適応。第3、7エンドで精度の高いラストショットでともに2点を獲得し、第9エンドでもダブルテークアウトを披露。第1、4、5エンドでも後攻のカナダを追い詰め、不利とされる先攻の日本が得点をあげる、すなわちスチールを成功させた。 しかし、キャプテンおよびリザーブとして平昌五輪の銅メダル獲得を裏方で支え、いま現在はロコ・ソラーレの代表理事を務める本橋麻里さんは、勝利した直後に自身のツイッター(@MariMotohashi1)を更新。そのなかでこう呟いている。 「8thEndが最高でした。アイスとストーンを物にした感たっぷりでしたね」(原文ママ) 試合を振り返れば、第8エンドはカナダが1点を取って5-7と追い上げている。いったい何が、本橋さんをして「最高でした」と言わしめたのか。 先攻の日本はリード吉田夕がハウスの中心部分にストーンを置くドローショットを正確に決め、セカンド鈴木が12時方向、つまりハウスの上にストーンを溜める。後攻が有利となるカーリングで、複数失点を防ぐことを目的とした戦術を展開した。 迎えたスキップ藤澤の1投目。リスクを冒してダブルテークアウトを狙うか。あるいは3時の位置にあるストーンをまず弾き出して、カナダの得点を確実に減らすかで迷った。4人全員が集まって話し合いを重ねた直後に、こんな声が重なった。 「タイム、取ろうか」 4人全員が両手で「T」の文字を作り、貴重なタイムアウトを要求。カナダ出身のジェームズ・ダグラス・リンドコーチが加わり、後者が選択された。迷いなく放たれた藤澤のショットは、3時の位置にあったストーンをアウトさせた。 続くジョーンズの1投目。3時の位置に留まった日本のストーンを弾き、自らのそれをハウス内に残すヒット・アンド・ロールを狙った。しかし、気負いすぎたのか、両方のストーンがアウトしてしまうミスショットになった。 すかさず藤澤がラストショットでダブルテークアウトを狙う。カナダのナンバーワンをアウトさせ、もうひとつはハウス内に残ったが、それもナンバー4だった。ジョーンズは最後の1投で、ナンバー1を狙うしか手段がなくなった。 カナダに1点を「取られた」のではなく、1点を「取らせた」という展開が本橋さんを喜ばせた。勝負どころでちょっとでも迷えば、リンドコーチの助言を迷わずに仰ぐ。その上でベストの戦術やショットを選び、スイープの強弱、氷面の状態を的確に読む作業のすべてを完璧に融合させる。その結果としてカナダから戦意を奪い取った。