「57歳で離婚を経験…」独身に戻った私が人生初のスキーを始めたことで将来への不安を受け入れられた理由「新しいことに挑戦する自由は常に私たちにある」
翌日は、緊張感よりやる気に満ちていた。
この日は、午前にループレッスンが2時間と、午後にプライベートレッスンが組まれていた。前日に費やした時間の半分でブーツを履き、バニースロープで滑りの練習を始めた。スノープラウという技術を重点的に練習するようにクリスチャンに言われたが、“足を広げて、かかとは外向き、つま先は内向き”にする姿勢が私にはどうしても難しく、正直、速く滑りたい気持ちもあった。坂を勢いよく滑り降りて、30%(いや、50%)の確率で転倒することがわかっていても、ケガさえなければ誰が気にするっていうの? そう思った。 プライベートレッスンが始まると、私はすぐに現実を突きつけられた。クラスの人数が3人減った分、私の練習量は4倍になり、クリスチャンの指導は厳しかった。スピードを出して勢いよく坂を下ると、「間違ってる! やり直し!」と叱責される。足を広げ、つま先を内側に向けてさっと止まることがどうしてもできなかった。何度もトライし、少しずつ改善できてはいたものの、自分に対する苛立ちは募るばかり。クリスチャンの意図はわかっていたけれど、彼の愛ゆえの厳しさにも心がざわついてしまった。 チョコレートを食べて休憩していると、クリスチャンは私を励ましてくれた。「スキーを覚えるのは言語を学ぶのと同じだよ。2日で習得することなんてできない。でも、練習を重ねていけば、いずれは上達する。時間がかかるんだよ」 そして15分後、チョコレートの糖分のおかげで再び挑戦する気持ちが湧いてきた。中級者向けのスロープを上る「マジックカーペット( ベルトコンベア型の搬器)」があり、クリスチャンに試してみようと言われた。1回目の挑戦では、坂の下でカメラを構える彼に見守られる中、自信を持ってスタートした。ゴールが近づき、カメラに向かって笑顔を見せようと体を後ろに傾けた途端、バランスを崩して転倒した。2回目は、気持ちを落ち着けて、山を尊重する心構えで臨んだ。クリスチャンの指示を頭の中で何度も繰り返しながら。「両方に体重をかけて! 前傾姿勢! 深呼吸! スマイル!」。今回は一定のペースで滑り降り、スピードを緩めて止まることに成功すると、思わずストックを高く掲げてガッツポーズをした。無事にスキークラスを卒業した私は、コンフォートゾーンを超えられた自分を誇らしく思い、力強さを手にすることができた。
マイアミに帰ると、スキーレッスンで得た教訓がより深く心に響くようになった。
「飛んでいるような感覚」と「転んでいるような感覚」の違いは、恐れの有無であることに気づいた。スキーを習うことも、プログラミングを学ぶことも、新しいことに挑戦する自由は常に私たちにある。雪に覆われた斜面で、私は初心者であることの楽しさを知り、失敗することの不可避性とその価値を学んだ。私は今、未来に不安を抱く代わりに、この人生の不確かな段階を受け入れ、その可能性を歓迎することにしている。 もしつまずいてしまったら? もう一度立ち上がって挑戦すればいい。