なぜ巨人の坂本勇人は右打者史上最年少で通算2000本安打を達成できたのか?
初ヒットは2007年9月6日の中日戦の延長12回表に上原浩治の代打で出場し、高橋聡文から放ったセンターへの2点タイムリー。そこから始まった通算安打記録をプロ14年間で2002本まで積み上げた。新型コロナ禍で、開幕が3か月遅れたが、もし通常通りのシーズンであれば、史上最年少記録も達成していたのかもしれない。 なぜ坂本は2000本安打を打てたのか。 坂本の何がどう凄いのか。 2012年から3年間、巨人の1軍戦略コーチ、打撃コーチとして坂本を近くで見てきた橋上氏は、「技術力、体力、精神力の3つの力を兼ね備えているから、激務のショートのポジションで、31歳の若さで大記録を成し遂げることができたのでしょう」と絶賛した。 第1の理由は技術力。 坂本の特筆すべきバッティング技術とは内角打ちの上手さだ。今季のコース別打率を見ると内角の打率がなんと.373である。 「もう広く知られているが坂本は、内角を打てる打者だ。野村克也さんは、プロで成功する投手は、内角球が使える投手、成功する野手は内角球が打てる野手と言っていた。それくらい内角球を打つことは難しいのだが、坂本は若い頃から内角球を苦にしなかった。抜群のセンスがあった」 内角球を打てる右打者は2種類に分類されるという。 「左手が抜ける選手と右手を絞れる選手」 内角打ちの名人といわれた山内一弘氏は、インパクトの瞬間に右手をたたみこむようにして絞ることで内角球を難なくさばいた。一方で2000本安打の先輩である古田敦也氏は、左手の抜きで内角球をさばいた代表選手。坂本は左手を抜くタイプだという。 「体の回転力も連動して使うが、坂本は左手のうまい抜き方で内角球に対応するタイプ。左手を抜き、同時に体を回転させ、インサイドアウトにヘッドを使ってボールをとらえるので、普通ならファウルになるボールがファウルにならない。2000本安打を打てた根源の技術だと思う。元々は、左利きだと聞くが、彼の左手の器用さは、そこから由来するのかもしれない」 坂本は左利きだが、小学生のころ、たまたまおさがりでもらった兄のグローブが右利き用のものだったことをきっかけに右投げ右打ちになった。珍しいパターンだが、左利きの特徴が内角打ちの上手さにつながっている。