なぜ巨人の坂本勇人は右打者史上最年少で通算2000本安打を達成できたのか?
第2の理由は、その体力だ。 「ショートは近代野球で最も運動量の多いポジション。今年は体調不良の時期があったが、レギュラーとして試合に出続ける体力が坂本にはある。ストイックにトレーニング、食事などを節制している証拠。チームの勝利のために試合に出続けることの重要さは、阿部慎之助から伝授されたものではないだろうか」 坂本は現2軍監督の阿部慎之助が現役時代に行っていたグアムの自主トレに同行していた。そこでトレーニングの重要性と休まずゲームに出続けることがチームの勝利に貢献するという哲学を説かれた。 そして第3の理由はメンタルの強さ。 橋上氏は、「自分の信じるものにしか耳を貸さないという頑固さがある」という。 2012年に橋上氏が戦略コーチとして巨人にデータ野球の活用を持ち込み、阿部慎之助や長野久義(現広島)が心酔して結果を出したが、坂本は、しばらく橋上氏のデータ野球に耳を傾けなかったという。 「データは、自分でやる気にならないと使えない。だから、私もあえて坂本とは距離をとりアプローチをしなかった。最初はデータを有効的に使うつもりはなかったようだった。でも慎之助や長野らと私のやりとりに関心を示して見ているなあという視線があったんです」 坂本は、橋上氏が提供するデータ野球というものを彼なりに見極めていたのかもしれない。だが、7月のある日、坂本が対戦する投手の傾向を橋上氏に尋ねてきた。坂本とコミュニケーションを取れるようになって、橋上氏はひとつの提案をしてみたという。 「坂本は内角が打てる一方で外の変化球が弱点だった。そこで提案してみたんです。追い込まれるまでは、ホームベースを半分に割り、外の変化球は、死角になるような目付でボールを待っていればどうか、と。内角から入ってくる変化球は別だが、ホームベースの半分から外へボールになる変化球は思い切って捨てるんです」 目付とは、ボールを見極め、狙い球を絞るための作業だが、外角低めの変化球を死角にしてしまうとは大胆な発想だった。だが、外角の揺さぶりに悩んでいた坂本は、このアドバイスを受け入れトライした。この年、坂本は173本のヒットを打ち最多安打タイトルを獲得している。 「自分で考えて“これは“というものしか吸収しない。だからぶれない。スランプがあっても大きく崩れることがない。坂本の2000本を支えたものは、彼の強い信念、メンタルにあると思うんです」