子どもが運営する鉄道!? ハンガリー「Children’s railway」の謎に迫る
旧ソビエト連邦が作り上げた「職業体験」としての観光列車
しかし一体、どのような経緯でこのChildren’s railwayは誕生したのだろうか。 はじめてChildren’s railwayが建設されたのはハンガリーではなく、ロシアであった。1932年、首都モスクワにあるゴーリキー公園に、世界初となるChildren’s railwayが開通した。当初、このChildren’s railwayは旧ソビエト連邦が行なった教育政策の一つであり、子どもたちに社会主義的な労働倫理を浸透させることを目的に設立されたものだったのである。1940年代には、ロシアのみならず、ソ連影響下にあった東ヨーロッパの国や中央アジア、コーカサス地方の国で次々と建設された。 ソ連崩壊後、各国のChildren’s railwayは次々と廃路になっていった。しかし現在でも、ロシアのモスクワや地方都市クラスノヤルツク、スロバキアの地方都市コシツェ、アルメニアの首都エレバンなどでは運行が続けられている。しかし、ブダペストのこの路線はその中でも最長であり、2015年には、「世界最長の子供が運営する鉄道」として、ギネス世界記録に登録された。また前述したように、ほぼ年中無休で運行しているという点でも、世界的に珍しいといえるだろう。 ハンガリーの未来を担う子どもたちが運営する、のどかな観光列車。ブダペストに来たらぜひ乗ってみてはいかがだろうか。 文・写真/草薙由莉(海外書き人クラブ/ハンガリー在住ライター)青山学院大学卒業後、出版社に就職し美術の教科書の編集に携わる。2023年よりハンガリー、ブダペストの大学院へ留学。文化人類学を学ぶかたわら、現地の文化についての記事を執筆している。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員
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