トランプ次期大統領が画策するウクライナ戦争の停戦・和平交渉、ウクライナの“中立国化”が現実的ではない理由
■ 国際法で決められた数々の条件クリアが必須の「永世中立国」 「中立化も悪くはないのでは」と楽観視する向きもあるが、国際社会はそう甘くなく弱肉強食が基本だ。冷戦時代に旧日本社会党(現・社会民主党)が「非武装中立論」(東西どちらの陣営にもくみせず自衛隊も解散)を党是としたが、あまりにもファンタジーで、それはロシアによるウクライナ侵略戦争の現実を見ても一目瞭然だ。 では、仮にトランプ次期大統領がロシアのプーチン大統領との停戦交渉に臨み、「ウクライナ中立」のカードを切った場合、具体的なスタイルはどうなるのか。 永世中立の「スイス型」を望む声も耳にするが、本稿では「ベルギー型」「フィンランド型」も加えた3タイプの背景や結末について検証してみたい。 まず、スイス型は永世中立を採用し、「永久(永世)に中立を貫く」ことを世界に宣言する。だが単に一方的に中立を喧伝しているだけでは信頼性に欠け、逆に他国の侵略を許す恐れすらある。 永世中立を掲げるには、国際法で決められた数々の条件をクリアしなければならない。以下の主な項目についても厳守が必要だ。 ・複数の主要国や国連が中立を認め、これらの国々と裏付けとなる条約を結ぶ ・永世中立を認可した国々がその国の独立や領域(領土・領海・領空)の保全を保証する ・軍隊を持ち防衛の義務を負う ・個別的自衛権の発動(専守防衛)以外の戦争や外国の紛争への参戦は禁止 ・他国と軍事条約を結んだり、外国軍に駐留・領域通過を認めたりは禁止 特に「複数の主要国や国連が中立を~」が肝と言える。世界に中立国は多いが、国際的に永世中立だと認められている国は現在、スイス、オーストリア、トルクメニスタンの3カ国に過ぎず、トルクメニスタンは1995年に史上初の国連総会で認可された永世中立国である。 コスタリカも永世中立を標榜するが、集団的自衛権的な性格を帯びる米州機構(OAS)に加盟するため、国際的な同意は得られていない。