《ブラジル》海軍女医が流れ弾で死亡=自分が院長務める病院で
リオ市北部で10日、海軍所属の医師が、自らが院長を務める病院で勤務中に流れ弾に当たって死亡した。隣接するファベーラ(貧民街)で警察による取り締まり作戦が行われ、銃撃戦の流れ弾が病院の窓ガラスを突き破り、被害者の頭部に命中した。奇しくもこの日は彼女の息子の22歳の誕生日だったと同日付G1などが報じた。 事件は同日朝、マルシリオ・ジアス海軍病院内で発生した。ジゼリ・メンデス・デ・ソウザ・イ・メロ医師(55歳)は、院内講堂で行われていた式典に参加していた。銃撃を受けた直後、同僚の医師らによって緊急手術が行われたが、午後4時半頃に死亡が確認された。 ジゼリさんが銃撃を受けた際、ガンバ貧民街で車両盗難事件に関与した犯罪者の逮捕を目的とした作戦が、軍警の平和維持駐留部隊(UPP)によって進行中だった。事件の詳細については現在、市警殺人捜査課(DHC)が捜査を進めており、海軍も協力して事実関係の解明と発砲者の特定に努めている。 リオ大都市圏での流れ弾による犠牲者はこれで105人目、うち23人が死亡。60人が警察の作戦中に撃たれた。2017年以降、流れ弾による犠牲者は累計で1142人に達している。 リオ州議会人権・市民権委員会(CDDHC)は深い憂慮を示し、「これは、治安対策における計画性と情報収集の欠如を露呈する新たな事例であり、無実の命を危険にさらすことになった」との声明を発表し、厳格な調査を求めた。 ジゼリさんは老年医学の専門家で、同院長も務めていた。長年にわたり海軍医師として多くの患者に貢献してきた人物であり、その死は海軍内部だけでなく、広く医療業界にも衝撃を与えた。彼女は近く海軍医師の最高位アルミランテ(提督)に昇進する予定であったことも報じられており、その業績と功績は高く評価されていた。 事件の日に誕生日を迎えたジゼリさんの息子、ダニエルさんは「心が引き裂かれる思いだが、神はすべてをご存じだ」とSNSに投稿し、特別な日に母親を失った悲しみを滲ませた。 事件の背景として、警察作戦が行われていた地域での治安悪化や犯罪の増加が影響していると見られており、リオ市内での治安維持と市民の安全に対する懸念が一層高まっている。この事件は、治安部隊の取り締まり作戦が行われる際のリスクや、その影響を受ける一般市民の安全について再考を促すものとなっていると報じられた。