英キャサリン妃が終えたがん治療、「予防化学療法」とは なぜこの治療を受けたのか
化学療法はどれほど有効なのか
化学療法は一種類の治療法として語られることが多いが、ニューマン氏によると、薬には100種類以上が存在し、それぞれが異なる種類のがんの治療に使用されるという。 化学療法はどのタイプのがんであっても推奨される可能性があるが、キャサリン妃が受けている「予防的」な化学療法は、「すべてのがんの治療に広く用いられているわけではありません」と、米UCLAジョンソン総合がんセンターの婦人科腫瘍専門医のベス・カーラン氏は言う。「ですが、多くの早期の乳がん、大腸がん、卵巣がんなどを治癒するためによく使われています」 補助的な化学療法はまた、「非常に初期のがんで、わずかな病変が残っている可能性すら極めて低い場合には、通常は推奨されません」とフォン氏は言う。
キャサリン妃はなぜこの治療を受けたのか
ニューマン氏によると、キャサリン妃の場合、手術後に病変がわずかに残っており、対処する必要があった可能性が考えられるという。 自身の経験上、これは一般的な処置だとラトナー氏は述べている。「われわれが懸念するのは、微小ながん細胞が残っていて、時間がたつにつれてそれが増殖し、急速に離脱、転移して、正常な組織を侵食することです」と氏は説明する。「だからこそ、そうした細胞を破壊するために、補助的な化学療法を勧めることがあるのです」 今年初めに行われた腹部手術の際、どのような種類のがんが発見されたのかは不明だが、「キャサリン妃がこの治療を受けたのは、担当の医師らが、これによってがん再発の可能性が低くなると考えたからでしょう」とデイハット氏は言う。
「何より重要なのは早期発見」
キャサリン妃は一流の医療にアクセスでき、がんを根絶して再発を防ぐ複数の治療を受けている。「世界中のだれもがこうした治療を受けられるわけではありません」とニューマン氏は言う。 キャサリン妃はまた、幸運にもがんを早期に発見できた。それが最悪の結果を避けるうえで助けとなる可能性が高い。「キャサリン妃は42歳ですが、がん検診のガイドラインには通常、彼女の年齢層は含まれていません」とフォン氏は言う。 ニューマン氏は、キャサリン妃の診断が、ほかの人たちにも検診を受けるよう 「警鐘を鳴らす」役割を果たすだろうと述べている。 米がん協会は、女性は25歳から子宮頸がん検診を、45歳から乳がん検診を受けるよう推奨している(編注:日本の厚生労働省は女性は20歳から子宮頸がん検診を、40歳から乳がん検診を受けるよう推奨)。 また、45歳以降は全員が大腸がん検診を、45歳以降は一部の男性が前立腺がん検診を受け、がんの家族歴がある人や喫煙者は、より早い時期に検診を受けるべきかどうかについて、かかりつけ医に相談することを勧めている(編注:厚生労働省は40歳から大腸がん検診を推奨)。 「現代のがん治療において、何より重要なのは早期発見です」とラトナー氏は言う。「だからこそ、がんの早期発見と予防の効果的な方法について、啓発活動や教育を含め、多くの努力と研究がなされているのです」
文=Daryl Austin/訳=北村京子