英キャサリン妃が終えたがん治療、「予防化学療法」とは なぜこの治療を受けたのか
がんの主な治療法と特徴
がんとは、細胞のDNAに変異が生じるせいで、その細胞が急速かつ制御不能に増殖を始め、体のさまざまなシステムや器官を危険にさらす病気だ。 がんを引き起こす細胞の変異は、偶発的に起こる場合もあれば、大気汚染、日光への過度な曝露、食生活、喫煙などの生活習慣や環境要因から生じることもある。研究からは、特定のがんの高いリスクには遺伝もかかわっていることがわかっている。 患者にがんが発見されたとき、専門医が最初に行うことは、これらの悪性細胞を死滅させるか、あるいは体内から除去する最も安全かつ効果的な方法を判断するかだ。 治療法としては、がんのかたまりを切除する外科手術、高出力の電子線や陽子線などをがん細胞に集中的に照射して死滅させる放射線療法、薬(化学物質)でがん細胞を破壊する化学療法などがある。 多くの場合、複数の治療法を組み合わせたアプローチが推奨される。「こうした治療の目的は、どんなにささいなものでも、がん細胞を破壊することです」と、米コネチカット州にある米エールがんセンターの婦人科腫瘍専門医エレナ・ラトナー氏は言う。 がん細胞を外科的に除去、あるいは根絶したあとで、再発を防ぐための「補助療法」が行われることもある。キャサリン妃が受けていると言った「予防化学療法」とは、おそらくこの処置を指していると思われる。 「がんの補助療法は、再発のリスクを減らし、(手術のときの検査ではわからない)微小転移を治療するために行われます」と、米ロサンゼルスのUSCノリス総合がんセンターの消化器腫瘍専門医サイマ・イクバル氏は言う。この治療のあとには、「病気の再発がないことを確認するため、スキャンによる経過観察が行われます」
「予防化学療法」では何をする?
腫瘍を取り除いたあとに、再発の予防を目的として化学療法を受ける場合(キャサリン妃のケースはこれに当たると思われる)でも、あるいはすでにあるがんを標的とする治療を受ける場合でも、「使われる薬は同じです」と語るのは、米がん協会の最高科学責任者ウィリアム・デイハット氏だ。 こうした化学物質は経口で、あるいは静脈内に投与される。化学物質は急速に増殖するがん細胞を破壊するよう設計されているが、「残念ながら、化学療法は毛包、消化器系の内壁、血液細胞といった、体内のほかの増殖がさかんな細胞にも影響を及ぼします」とデイハット氏は言う。 そのため、化学療法は体内のさまざまな部位に害を及ぼす。たとえば、脱毛、免疫系の障害、疲労感、吐き気、下痢、認知機能の低下、膀胱のコントロールの喪失、食欲不振、手足の指先にしびれやチクチク感を覚える神経障害(ニューロパチー)などを引き起こすことがある。 「化学療法の副作用は、患者に投与されている薬の種類によって異なります」とイクバル氏は言う。 医学の進歩のおかげで、こうした副作用は以前よりも管理がしやすくなっている。「現在、多様ながんに対する化学療法の大半は、個人に非常に特化し、標的を絞ったものとなっており、過去数十年に比べて、はるかに耐えやすいものになっています」とラトナー氏は述べている。 さらに、副作用の多くは完全に回復が可能だ。「治療が終われば、発毛やその他の身体機能は通常、以前と同じ状態に戻ります」と、米イリノイ州にあるノースウェスタン・メディカル・グループの腫瘍専門医ヤザン・ニューマン氏は言う。