パナソニックから日本の人事を変える 世界中の現場で学んだ「人事は運用が8割」
従業員が「フロー状態」になれる環境を作り、「PX」を推進したい
――働きがいを高めていくために、どのような方針を立てていますか。 パナソニックには、創業者の松下幸之助から受け継いだ経営哲学と行動指針があります。これを従業員個人が自然に理解し、腹落ちできるように、各事業会社のHRリーダーとともに活動しています。 たとえば、リスクを取って挑戦する人を称賛し、挑戦しない人へは厳しくフィードバックしていく必要があるでしょう。これは人事だけではなく、組織のあらゆるレベルで進めていかなければなりません。 多様性の拡大も重要です。2023年、パナソニックでは中途採用入社者が2000人を超え、初めて新卒採用入社者の人数を上回りました。多様な人材の知見や方法論を吸収し、プロパーだけでは見つからなかった新しいやり方を実践していけるようになるはずです。 すでに国内では中途採用入社者の割合が20%を超えています。20%を超えると中途採用入社者が組織内の珍しい存在ではなくなり、一定の存在感が発揮されるようになります。これを後押しできれば、さらなる変化につながるはずです。 ――パナソニックの人事をさらに発展させていくための目標をお聞かせください。 従業員が「フロー状態」になれる職場環境を作り、拡大させていきたいと考えています。 フロー状態とは、業務に没入し、楽しくて仕方がない状態を指します。従業員が言われたことや求められたこと以上の業務に挑戦でき、かつ挑戦を阻害する要素が少なく、力を発揮しやすい職場であればフロー状態に入れるはず。そのための環境整備を進めていきます。 松下幸之助が残した言葉にも「会社が社員に与えられる最上位の幸せは、仕事が楽しくて仕方ない状態を作ること」とあります。これはまさに、フロー状態に入る従業員を増やすことだと言えるでしょう。 パナソニックの現経営陣からは、よく「役員に昇進するまでのキャリアではヒリヒリ感の連続だった」と聞きます。最近は事業の成長がスローダウンし、守りの仕事も増えているので、フロー状態になかなか入れないのではないかという反省の思いも聞かれました。フロー状態に入っている従業員の比率を高めることが、経営視点でも今後の重要指標となります。 また、「PX」(パナソニックのデジタルトランスフォーメーション)を支える組織開発・人材開発も今後の重要テーマです。社内の事業では、生成AIを活用したビジネスがどんどん立ち上がっています。一人ひとりが挑戦できるカルチャーを加速させ、PXを実現していけば、これまでにない変化につながるはず。兆しは社内のあちらこちらに見られます。私の役割は、これらの兆しを大きな炎に変えることだと認識しています。