犯罪心理学者が見た「頑張りなさい」と言われ続けた少年が大麻に手を出すまで…子どもの意欲を破壊する“呪いの言葉”
ご褒美は逆効果?
ここまでお読みになられた方の中には、「頑張ってと無理に言ってはいけないのはわかったけど、でも試験とかはどうしても頑張ってもらわないと困る」という方もいるでしょう。もちろんどうしても頑張ってほしいときがあるのはよくわかります。たとえば、入試のような1回きりの試験だってあるでしょう。では、どうやって動機づけすればいいのか。 そもそも動機づけには2種類あります。ひとつは「外発的な動機づけ」。これは、評価や報酬を与えて次の行動を促すという方法です。営業成績に応じて給与が増えるというようなシステムはまさにこのような外発的な動機づけを用いています。 もうひとつは「内発的な動機づけ」。こちらは、課題達成したことによって発生する本人の中の充実感が次の課題達成を生み出すというものです。どちらも動機づけとして効果的ではありますが、逆効果になってしまうこともあります。 頑張ってほしいとき、外発的な動機づけとしてご褒美を用意するという人もいるかと思います。 「テストに合格したら、欲しがっていたゲームを買ってあげる」 「今日の習い事を頑張ったらアイスクリームを買ってあげる」 心当たりのある人は多いのではないでしょうか。 そこで知っておいてほしいのが「アンダーマイニング効果」です。 アンダーマイニング効果とは、内発的に動機づけられた行為に対して、外発的な動機づけを行うことでモチベーションが下がってしまう現象のことです。本人がやりたい、頑張りたいと思って行っているところに「できたらご褒美をあげるね」と言ってしまうと、行為の目的が「やりがい」から「ご褒美(報酬)」に変わってしまいます。すると、次から報酬がなければやらない、というようになってしまうのです。 たとえば、子どもが「親の役に立ちたい」「家事をやってみたい」という気持ちからお手伝いを進んでやっていたとします。そこへ「助かったからお小遣いをあげるね」と報酬を渡します。 「1回お手伝いするごとに100円あげるから頑張って」 そんなふうに外発的な動機づけをすると、その子は100円をもらうためにお手伝いをするようになるでしょう。そして、報酬がなくなるとお手伝いをしなくなります。内発的な動機が減ってしまったのです。 金銭的な報酬や、欲しいものを買ってあげるという物質的報酬がわかりやすいですが、罰則を設けたり、競争をさせたりするのも「外発的な動機づけ」にあたります。 「宿題を終わらせなかったらオヤツ抜き」 「きょうだいでお手伝いをやった日はカレンダーにシールを貼り、1か月分を集計して勝ったほうをお祝いする」 こんな例も同じように、外発的動機が目的化します。 本人の意欲を大切にするには、アンダーマイニング効果にも十分注意しなければなりません。