犯罪心理学者が見た「頑張りなさい」と言われ続けた少年が大麻に手を出すまで…子どもの意欲を破壊する“呪いの言葉”
意欲を高めるには意欲そのものを褒めよう
それでは、「褒める」のはどうでしょうか。 金銭を含めた物質的報酬に比べ、心理的報酬はアンダーマイニング効果を発生させにくいと考えられます。ただし、結果に対してだけ褒めるのであれば、やはり目的化するおそれがあります。 お手伝いの例だと、洗濯物が速くきれいにたためたときに褒める一方で、遅かったりぐちゃぐちゃだったりしたときに褒めないようにすると、褒められたいから頑張るようになるでしょう。上達はするでしょうが、もともと自発的に持っていた「家事ができるようになりたい」という意欲は減退するかもしれません。 褒められることが目的化するからです。そして、洗濯物をうまくたためても褒められなくなると、もうやらないということになりかねません。 逆に、意欲を持っていること自体を褒めると、意欲が高まります。 「家事ができるようになりたいなんて、すごいね」 これなら、ますますやる気が出るでしょう。 目標達成のご褒美を使う場合、心理的報酬とうまく組み合わせるのがコツです。ご褒美は子どもにとって嬉しいものですが、それはご褒美をくれる親が喜んでくれている、賞賛してくれているという部分も大きいのです。 ですから、プロセスを褒めつつ、ご褒美を渡すときは親自身も嬉しいことを伝えるのがいいでしょう。
【Profile】出口保行
犯罪心理学者。1985年に東京学芸大学大学院教育学研究科発達心理学講座を修了し同年国家公務員心理職として法務省に入省。全国の少年鑑別所、刑務所、拘置所で心理分析した犯罪者・非行少年は1万人を超える。2007年に法務省を退官し、東京未来大学こども心理学部教授に着任。2013年からは学部長、2024年からは副学長を務める。現在、フジテレビ「全力!脱力タイムズ」にレギュラー出演するなど、メディア出演・講演多数。
【Profile】尾添椿
漫画家。1993年、東京都中野区出身。両親から心理的虐待を幼少期から受け続け、成人後に分籍・住民票の閲覧制限を両親に対して実行した体験を漫画にしてSNSに投稿、大きな反響があったことをきっかけにエッセイ漫画を描き始める。『生きるために毒親から逃げました。』『こんな家族なら、いらない。』(以上、イースト・プレス)、『そんな親、捨てていいよ。』『それって、愛情ですか?』(以上、KADOKAWA)など続々と執筆中。
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