手しごとの原点を見据えてきた稀有なマーケットが10年問い続けてきたこと
「旅と手しごと」をテーマに、日本各地からもの作りをする表現者たちが集う合同展示会&マーケット「TRACING THE ROOTS」が、2024年10月8日(火)~10月13日(日)、代官山ヒルサイドフォーラムを会場に開催されます。今年で10周年という節目で最終回を迎えるにあたり、主催者であるマザーディクショナリー代表の尾見紀佐子さんに、企画の発端からこれまでの歩み、そしてこれからについてお話を伺いました。
2013年に母親と子どもが集い、交流する場としての「かぞくのアトリエ」を、子どもたちが大人と出会い、自分の生き方や価値観を築く場として「代官山ティーンズ・クリエイティブ」を2015年にオープン。地域に根づき、いつでも、誰でも、訪れる人が安心して楽しめる心地よい居場所作りをしてきたマザーディクショナリー代表の尾見紀佐子さん。これらの施設運営事業を手掛けながら、2015年に新たにスタートしたプロジェクトが「TRACING THE ROOTS」です。それまでとはまったく違う事業のように見えますが、そもそものきっかけは何だったのでしょうか?
「2013年に起業してからは居場所づくりが中心でしたが、もともとイベント事業は好きで得意でもあり、続けていきたいという思いがありました」 起業する10年以上前の2001年から「マザーディクショナリー」としての活動は始まっていたという尾見さん。きっかけは、フリーペーパー『dictionary』[*1]の78号で、新しい時代の母親像をテーマにした「mother」という特集を手掛けたことでした。その後も『dictionary』の「mother」特集を続けながら、2009年からはそこで出会ったアーティストらとともに行うイベントを年に1~2回開催していました。
「1日に1000人の来場者があるような規模だったこともあり、共通の知人を介して、福岡・博多『LIGHT YEARS(ライトイヤーズ)』[*2]の前田淳さんから、東京で何かおもしろいイベントができないかと相談を受けたのが10年前。新規事業としてインドやアフリカ、モロッコなどの民芸品や家具、インテリア雑貨などを取り扱い始めたころでした。