手しごとの原点を見据えてきた稀有なマーケットが10年問い続けてきたこと
イベントをやりたい気持ちはありましたが、ちょうど施設の立ち上げをいくつか手掛けていたタイミングで、最初は無理かなと思ったんです。でも、モロッコに行くと聞いた瞬間、行ってみたい!という気持ちのほうが勝ってしまって。まず1回目は、青山の骨董通りを入ったところにあるライトボックススタジオ青山で、開催期間は3日、出展者は九州と関東を拠点に活動する11組。本当に小さな規模で、お料理あり、ライブありの和気あいあい、ゆるやかなものでした」
初回は「いろいろいろ」だったイベント名が「TRACING THE ROOTS」に変わったのは、翌2016年の2回目から。「先人が通ってきた道を辿ってみる」という意味で、当時のDMには以下のように綴られていました。
むかしむかし そのむかし そこにあったこと 土と水と空と光 空をあおぎ 耳を澄ます 大地の声を聴き 土を耕し 季節のものを食べ 身にまとうものをつくる 誰かと出会い、身近なものを持ち寄り、ひらめきあって、 あたらしいものがうまれる 世界はひとつにつながっていて、 古代から人はそんなことを繰り返してきたのかもしれません
「『LIGHT YEARS』は、世界各地に足を運び、人の手から生まれたもの、プリミティブで普遍的なものを探し出してきた人たち。いざ開催してみると、改めて彼らのものを選ぶ目の確かさとディスプレイの素晴らしさに圧倒されました。来てくださった方たちも喜んでいて、わたし自身も大いに刺激を受けましたね。大量生産、大量消費の今の時代、ものがこれだけ溢れかえっている世の中で、未来に向けて新たに何を作り、何を選び、何を残していくのか。多くの作り手や届け手たちがそれぞれに考えていて、その部分を共有できる人たちとやっていきたい。一方、会場にいらしてくださる方たちも、現代社会で生きていくうえで、ものとの関わりは切り離せないもの。このイベントを通して、新しい時代のものとの関わり方、つながり方を感じ取ってもらえるものにしたい。そんな思いでこの10年、一年に一度、力を注いできました」