ドラマ・ドキュメンタリー・コメディ。見ておきたい「ビートルズ映画」3選
今もなおビートルズの人気は高い。それは映画の公開が日本でも続いていることからもわかる。そこで今回は、数あるビートルズ映画のなかからオススメ作品を選んでみた。ドラマ、ドキュメンタリー、コメディ、異なるジャンルからビートルズファンでなくても楽しめる3本を紹介しよう。 【参考写真】ビートルズ初心者にもオススメの3本をセレクト ◇ジョン・レノンとポール・マッカートニーの出会い 『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』ジョン・レノンの少年期、ポール・マッカートニーと出会った頃を描く母乞いもの。 母を乞う少年がレノン。レノンは両親と生き別れ、母の姉であるミミおばさんに育てられた。そう遠くない場所に住んでいた母親を、レノンが探しあてることから、ストーリーが展開していく。ロカビリーをかけて踊るような母、お堅いミミおばさん、対照的な二人のあいだを行き来するレノン、という奇妙な三角関係の様相を描いている。 同じ頃、ロックに目覚めたレノンの前に現れた天才的音楽少年、彼こそがポール・マッカートニーだった。 その後、レノンとマッカートニーはご存知のようにビートルズになるわけだし、母とレノンがどうなるかもビートルズファンには知られているかもしれないが、物語として見ると胸に迫る。 レノンの父親違いの妹ジュリア・ベアードの本を基に、映画『コントロール』のマット・グリーンハルシュが脚本を手掛けた。サム・テイラー=ウッド(当時)長編監督デビュー作で、監督の娘2人(前年に離婚していた前夫との子)が、ジュリアともう1人の妹を演じている。 本作のワールドプレミアが行われた2009年のロンドン映画祭で、監督はオーディション時のアーロン・ジョンソン(当時)を「出会った最初の数分で、この子だ!って」と、今となっては違う意味での納得発言をしている。 「お茶を勧めたりするわたしに、イラついてる感じが見えた。すごく集中していて、張り詰めていた。ほかにも数百人のオーディションがあったけど、レノンはこの子だって、心の中ではすぐに決まった」と即決だったそう。 アーロンが射止めたのは、主役の座だけではなかった。今では名前もアーロン・テイラー=ジョンソンにサム・テイラー=ジョンソンだ。 ワールドプレミア後、当時19歳だったアーロンと42歳だった監督の婚約が発表された。翌夏、二人のあいだに女児誕生、監督には前述のように前夫とのあいだに2人の娘がいて、さらにもう1人生まれてアーロンは若くして4人のパパになった。 体操とダンスで鍛えた高い身体能力を持つアーロン、現在は次期007抜擢かと注目を集めている。 余談だが、レノンが少年期を過ごしたミミおばさんの家は観光名所になっている。 本作から10年ほど前、筆者もリバプールに行った際、寄ってきた。そのときは家には入れず外観のみだったこともあり、たいして感慨もなく眺めた。同時期、ドイツで感じ入りつつ見て回ったルートヴィヒ2世の住居とは大違いだ。 ルートヴィヒのは城で、ミミおばさんのは普通の家だからではなく、そもそも思い入れが違った。もちろん思い入れの素は、ルキノ・ヴィスコンティ監督『ルートヴィヒ』だ。ミミおばさんの家も、本作後ならもっと感慨深かったろうに、惜しいことをした。