災害大国の日本 トイレ、キッチン、ベッド――避難所のTKBの改善が命を救う #災害に備える
確かに長野県のように、避難所のTKBを向上させるため、事前に各所と協定を結ぶというのも一つの方法だろう。ただし、榛沢氏が指摘するように、欧米先進国が備蓄を重視しているのは、災害の規模によっては、備蓄がなければ全く対応できないからである。 例えば、阪神・淡路大震災では約31万人が避難生活をし、避難所閉鎖までに7カ月を要した。東日本大震災では約47万人で、避難所の閉鎖までに半年以上、原発事故で福島県双葉町の住民が避難した避難所の閉鎖は2年9カ月後という長期に及んだ。 これらの例から分かるように、未曽有の災害が発生した時は各自治体だけでは到底対応できない。そこで、都道府県や国それぞれで備蓄をして、対応していく必要があるというわけだ。 その上で、日本の避難所における最大の問題は、欧米先進国に比べて「避難所を設置する目的意識が追いついていないこと」と榛沢氏は語る。 「日本の避難所運営は被災者に我慢を強いるもので、その結果として大災害に匹敵するほどの災害関連死を生み出してきました。まずこのことが異常であることを認識すべきです」 典型的なのは、避難所となった体育館の硬い床の上で雑魚寝という光景で、これは欧米では「ありえないこと」だという。
「イタリアでは災害時、テントに家族単位で避難するのが基本です。テントといっても6人用で12畳分くらいある大きなもの。そこにカーペットを敷き、ベッドを置く。パーテーションで個々の空間を確保することもできます。イタリアでは段ボールベッドよりも簡易式の折り畳みベッドが主流です」 ベッド以外の食事やトイレも、日本とは水準が大きく異なっているという。 「食事は必ず食堂と決めたエリアで摂る『食寝分離』が徹底されています。日本の避難所で見られるように、被災者が食事をもらうために並ぶことはさせず、キッチンカーやコンテナキッチンで調理された温かい料理を配膳ボランティアが席まで運ぶ。料理は調理師免許を持つプロが作ります。トイレはコンテナ式で、水洗で洗面所もあるものが大量に備蓄されています」