災害大国の日本 トイレ、キッチン、ベッド――避難所のTKBの改善が命を救う #災害に備える
トイレ、食事、ベッドを改善する
「台風19号の時には、多くの方が長期間、避難所での生活を強いられました。避難所での健康維持や災害関連死を減らすためにも、特にトイレ・食事・寝床には良好な環境の確保が求められています」 長野県危機管理防災課の馬場浩司課長補佐兼防災係長は言う。同課は2021年度から「避難所TKB環境向上プロジェクト」を開始した。Tのトイレについて、長野市が出した台風19号の検証報告書にはこう書かれている。 <長野市が備蓄していた組立式簡易トイレは、特に女性で使用をためらう人が多く、店舗のトイレを使用する方もいた。できるだけ早い時期の簡易水洗型仮設トイレの設置が望ましい>
2016年に発表された内閣府のガイドラインでも、避難所のトイレが汚いことなどにより、トイレに行くのを我慢するために飲食を控え、栄養不足や脱水症状などを引き起こす可能性があることが指摘されている。 それを受けて長野県は、国土交通省が推奨する「快適トイレ」の整備をはじめた。通常の簡易トイレの2倍の広さがあり、洗面台もある。洋式便座で水洗式、施錠もしっかりしている。 建設機械レンタルのアクティオ長野支店は、台風19号の際、保有していた快適トイレを長野県内で30基貸し出した。県全域に十分に行き渡る数ではなかったが、使用された一部の避難所では好評だったと島田晋司支店長は言う。 「従来のものより、清潔で機能性も高い。広さもあり、プライベート性も高くなっています。また、においも抑えられる。とくに女性には好評だったと聞いています」 県は快適トイレを自ら保有するのではなく、県内レンタル業者が導入する場合に補助金を出し、災害時に優先的に使わせてもらう事業を進めている。来年度までに75基を確保する計画で、それとは別に、従来通りにレンタル業者から賃借することで、全部で175基を確保できると見込む。
キッチンカーとの連携を強化
Kのキッチン=食事についても、対策が取られている。前出の菊池さんら被災者の多くが感じていたのは、食中毒リスクを防ぐためメニューが揚げ物に偏り、野菜などの生ものが不足していたことだった。 県では今後、キッチンカーを営業している事業者と連携を強化し、避難所の食事内容を向上させていくという。 「どうしても避難所では揚げ物中心の弁当が多くなってしまいがちです。キッチンカーを営業している事業者さんと連携を図ることで、可能な限り、避難所で暖かく栄養にも配慮した食事を提供できるようにしたいと考えています」(前出・馬場さん)