深刻化する水害、損害保険料は値上げへ――リスクある地域は大幅にアップするのか?#災害に備える
近年、集中豪雨による洪水や土砂災害が頻発し、損害保険の支払いが急増している。金融庁の有識者懇談会では、「全国一律の水災の保険料率を地域によって変えるべきだ」という意見が出された。今後、リスクの高い地域の保険料が上がる可能性もある。一方、そんな土地に約3500万人が住んでいるという調査もある。水災料率の値上げはどうあるべきか。損保協会や研究者、水害で甚大な被害が出た自治体のトップに話を聞いた。(ジャーナリスト・岩崎大輔/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
■日本損害保険協会・経営企画部 西村敏彦・シニアアドバイザー
「近年、大雨による洪水や土砂崩れが頻繁に起きています。それによって増えているのが火災保険の支払いです。火災保険には火災だけでなく、台風による風害、落雷、雹(ひょう)、洪水、土砂崩れなど自然災害も含まれるからです」
2018年度は7月に西日本豪雨、9月は大阪などを襲った台風21号、24号と水害が続き、損害保険企業による火災保険の支払いは1兆2507億円に及んだ。1兆円を超えたのは1959年の調査開始以来はじめてのことだ。 ところが、翌2019年度も支払いは1兆596億円に達した。9月に千葉を襲った台風15号、10月は全国を襲った台風19号と続いたからだ。火災保険の支払いの頻出は、損保企業に重くのしかかっているという。 「2020年度、損保協会会員会社における損保企業の火災保険の収入は全体の16.9%で、自動車の任意保険(48.2%)に次ぐ主力商品です。しかし、この10年間、大規模な災害の頻出で多大な保険金を支払うため、火災保険の収支は赤字が常態化しました。2018年度はマイナス5225億円、2019年度はマイナス2878億円とかなりの赤字額です」 こうした状況を受けて、金融庁所管の公的団体、損害保険料率算出機構は火災保険の「参考純率」の引き上げを図ってきた。参考純率とは保険会社から出されたデータをもとに算出した、基礎として使用できる保険料率のこと。損保各社はこれをもとに自社独自の火災保険や自動車保険など保険料を設定する。いわば火災保険の目安となる基準値だが、2018年に+5.5%、2019年に+4.9%、そして2021年は+10.9%。4年間で3回の引き上げを行った。