2024年の食品業界、「2ケタ増」ヒットここにあり
「グミ」市場は3年連続2ケタ伸長
人口減少下でも市場が拡大している菓子市場。インテージSRI+(全国小売店パネル調査)によると、グミは2021年から3年連続2ケタ伸長で、急拡大のまま24年も好調を維持している。ハードグミは硬い食感が覚醒感を想起しやすい研究結果もあり、勉強や就業時に食べるという新たな食シーンに結び付いた。果肉入りやドライフルーツを模したものなどさまざまな商品が発売され、市場は活況を呈している。 また、ロッテのチョコレート事業は上期(4~9月)で過去最高の売上高を記録した。牽引役は「ガーナ」「コアラのマーチ」。コアラのマーチは3月に実施した500種類の名前入りビスケットの施策が奏功したという。
機能価値の浸透で「トマトジュース」も売上増
健康志向も続いている。インテージによると、トマトジュースは前年比25%増えた。カゴメは前年同期を上回り、チャネル・容器別のすべてが2ケタ増で推移。特に主力の「カゴメトマトジュース」は1~9月で前年同期比35%増と大きく伸びた。 高騰したトマトの代替需要があったことに加え、健康や美容といった機能価値の浸透によりトライアルが増えている。また、甘くなく自然な味覚価値でリピート層も拡大した。この追い風を受け、同社ではポッカサッポロの「キレートレモン」と組み新たな飲み方「キレトマ」を提案し、飲用シーンも広げた。 記録的な猛暑や来年も続きそうな物価上昇、地政学リスクなど、今後も生活に影響を与える大きな事象が起こりそうだ。今回は他媒体とは切り口を変えて、既存の食品カテゴリーに焦点を当てた。もちろん値上げ効果で「2ケタ増」になった商品もある。だが、新たな価値の提案が奏功した新商品は少なくない。「面白さ」もまた、食をめぐる価値の一端だ。ここを掘り当てた代表的なヒットが、アサヒビールが6月に発売した「未来のレモンサワー」。フルオープンの缶のふたを開けると、中に入っているレモンスライスが浮かびあがる仕掛けが話題となった。 飲食料品業界では、「センミツ」という言葉がある。本来は「千のうち三つしか本当のことを言わない嘘つき」を指すが、この業界では新商品で翌年も小売りの棚に残る商品は数少ないという言葉で使われる。一方、既存商品でも新たな食シーンや価値提案をすれば再活性化する。時短や簡便、節約志向が続く中、メーカーや小売りの提案力が試される。2025年はどんな商品にスポットが当たるか、ワクワクしてくる。
白鳥和生